1 英語教育改革の背景 ○ グローバル化の進展の中で、国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって極めて重要である。アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべき。今後の英語教育改革においては、その基礎的・基本的な知識・技能とそれらを活用して主体的に課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等の育成は重要な課題。 ○ 我が国の英語教育では、現行の学習指導要領を受けた進展も見られるが、特にコミュニケーション能力の育成について改善を加速化すべき課題も多い。東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年を見据え、小・中・高等学校を通じた新たな英語教育改革を順次実施できるよう検討を進める。並行して、これに向けた準備期間の取組や、先取りした改革を進める。 ○ 本有識者会議は、文部科学省の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を受けて平成26年2月に設置され、小・中・高等学校を通じた英語教育改革について9回の審議を重ねており、これまでの議論を審議まとめとして整理した。 ○ 今般の英語教育改革の背景として、社会における急速なグローバル化の進展という社会的な背景と、これまでの英語教育改革の進展や課題を踏まえた更なる取組の充実の2点が挙げられる。 グローバル化の進展の中での英語力の重要性○ 社会の急速なグローバル化の進展の中で、英語力の一層の充実は我が国にとって極めて重要な問題。 ○ 我が国では、人々が英語をはじめとする外国語を日常的に使用する機会は限られている。しかしながら、東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年はもとより、現在、学校で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍するであろう2050(平成62)年頃には、我が国は、多文化・多言語・多民族の人たちが、協調と競争する国際的な環境の中にあることが予想され、そうした中で、国民一人一人が、様々な社会的・職業的な場面において、外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定される。 これまでの英語教育の改革を経た更なる改善○ これまで英語教育では、幾多の議論を経て現行の学習指導要領が実施され、小・中・高等学校を通じて多くの取組と成果が見られるが、なお一層の充実が課題となっている。 ○ これまでの成果と課題を踏まえながら、小・中・高等学校が連携し、一貫した英語教育の充実・強化のための改善が求められる。その際、英語を「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を活用して実際のコミュニケーションを行う言語活動を一層重視し、小・中・高等学校を通じて、授業で発音・語彙・文法等の間違いを恐れず、積極的に英語を使おうとする態度を育成することと、英語を用いてコミュニケーションを図る体験を積むことが必要である。 ○ 英語教育の充実に当たり、「ことば」への関心を高める工夫によって更に外国語の効果的運用に必要な能力を伸ばすという視点が重要である。 本有識者会議における検討○ 有識者会議における議論は極めて多岐にわたっており、その議論や主な論点が分かるように、「3 英語教育の在り方に関する有識者会議における議論の詳細」(以下「詳細」とする。)を作成している。幾つかの論点については様々な意見も出たところであり、その点を含め詳細に記載している。 ○ なお、教育課程に関わる事項については、次期学習指導要領改訂に向けた教育課程全体の見直しの中で、また、教員養成に関わる事項については、教員養成に関する全体の議論の中で、更に検討を要する。 2 必要な改革について 改革1.国が示す教育目標・内容の改善○ 学習指導要領では、小・中・高等学校を通して1.各学校段階の学びを円滑に接続させる、2.「英語を使って何ができるようになるか」という観点から一貫した教育目標(4技能に係る具体的な指標の形式の目標を含む)を示す(資料参照)。(具体的な学習到達目標は各学校が設定する)。 ○ 高等学校卒業時に、生涯にわたり4技能を積極的に使えるようになる英語力を身に付けることを目指す。 小学校 :中学年から外国語活動を開始し、音声に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。高学年では身近なことについて基本的な表現によって「聞く」「話す」に加え、積極的に「読む」「書く」の態度の育成を含めたコミュニケーション能力の基礎を養う。そのため、学習に系統性を持たせるため教科として行うことが適当。小学校の外国語教育に係る授業時数や位置付けなどは、今後、教育課程全体の議論の中で更に専門的に検討。 中学校 :身近な話題についての理解や表現、簡単な情報交換ができるコミュニケーション能力を養う。文法訳読に偏ることなく、互いの考えや気持ちを英語で伝え合う学習を重視する。 高等学校:幅広い話題について、発表・討論・交渉など言語活動を豊富に体験し、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を高める。 小・中・高等学校を通じた一貫した指標の設定 ○ 各学校種での指導改善は進んでいるものの、学校間の接続(小・中連携、中・高連携)が十分とは言えず、進学後に、それまでの学習内容を発展的に生かすことができていない状況が多い。 ○ そこで、2020(平成32)年度を見据え、新たな英語教育を実施していくため、小・中・高等学校を通じた英語教育の充実・強化を進める。 ○ 生徒の英語力の目標については、「第2期教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)において、中学校卒業段階で英検3級程度以上、高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合を50%とすることとされている。この実現に向けて取り組むとともに、高等学校卒業時に、生涯にわたり「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を積極的に使えるようになる英語力を身に付けることを目指す。 ○ 小学校では、コミュニケーション能力の素地を養うという観点で、外国語活動を通じた成果が出ている。 【文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」】 ○ 一方、小学校の高学年では、抽象的な思考力が高まる段階であるにも関わらず、外国語活動の性質上、体系的な学習は行わないため、児童が学習内容に物足りなさを感じている状況が見られるとともに、中学校1年生の8割以上が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答していることから、中学校において音声から文字への移行が円滑に行われていない場合が見られる。 【文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」】 【小学校の事例】 ○ 小学校では、これまでの実践を踏まえながら、中学年から「外国語活動」を開始し、音声に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。高学年では身近なことについて基本的な表現によって「聞く」「話す」に加え、積極的に「読む」「書く」の態度の育成を含めたコミュニケーション能力の基礎を養う。そのため、学習の系統性を持たせる観点から、教科として外国語教育を行うことが適当である。 小学校中学年への外国語活動の導入は、英語学習に対する動機付けや、聞き取り、発音の向上に効果があると考えられる。また音声を中心に体験的に理解を深めることは、高学年よりも、小学校中学年の児童の発達段階により適していると考えられる。 小学校高学年では、現在、中学校で学ばれている内容を単に前倒しするのではなく、小学校の発達段階に応じて、積極的に英語を読もうとしたり書こうとしたりする態度の育成を含めた初歩的な英語の運用能力を養う指導が考えられる。 ○ 平成25年12月に文部科学省で取りまとめた「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では、小学校中学年に活動型を導入し、コミュニケーション能力の素地を養うため、週1~2コマ程度とすることが示されている。 ○ 一方、授業時数については、小学校の標準授業時数や、モジュール学習等の状況を踏まえたより詳細な検討が必要との指摘もあった(「詳細」を参照) 。 ○ 小学校では、英語に限らず、世界に数多くの言語があることを理解させることも重要である。 中学校・高等学校における取組○ 中・高等学校では、英語教育の目標がコミュニケーション能力を身に付けることでありながら、「英語を用いて何ができるようになったか」よりも、「文法や語彙等の知識がどれだけ身に付いたか」という観点で授業が行われ、コミュニケーション能力の育成を意識した取組が不十分な学校もあるとの指摘がある。 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】 ○ こうしたことから、中学校では、小学校との学びの連続性を図りつつ、身近な話題について理解したり表現したりするコミュニケーションを図ることができるようにすることが適当である。その際、文法訳読に偏ることなく、互いの考えや気持ちを英語で伝え合う学習を重視する。 ○ 外国語教育の実施に当たり、母語に関する教育との連携を通じて、「ことば」への関心を高める工夫が重要であるとの指摘があった(「詳細」を参照)。 改革2.学校における指導と評価の改善○ 英語学習では、とりわけ話したり書いたりする場面において、失敗をおそれず、積極的に英語を使おうとする態度を育成することが重要。互いの考えや気持ちを英語で伝え合う言語活動を中心とする授業を行うため、中・高等学校では、生徒の理解の程度に応じて、授業を英語で行うことを基本とする。 ○ 各学校は、学習指導要領を踏まえながら、4技能を通じて「英語を使って何ができるようになるか」という観点から学習到達目標(例:CAN-DO形式)を設定し、指導・評価方法を改善する。 中学校・高等学校における指導 ○ 現行学習指導要領における外国語の目標は、外国語を通じて、 言語や文化に対する理解を深め、 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成し、 (中学校では)聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養うこと、 とされている。学習の過程では、発音・表現・文法等があやふやになったり間違ったりするのは当然のことである。そうした失敗を恐れず、積極的に英語を使おうとする態度を育成するためにも、授業において実際に英語を使う言語活動をより一層重視する必要がある。 ○ 中・高等学校では、英語教育の目標としてコミュニケーション能力を身に付けることを設定しながら、「英語を用いて何ができるようになったか」よりも、「文法や語彙等の知識がどれだけ身に付いたか」という観点で授業が行われているとの指摘がある。この場合、コミュニケーション能力の育成を意識した取組も不十分であるとの指摘もある(再掲)。 ○ 中学校では、英語の教科書の本文や、そこで取り上げられている題材や言語材料を、生徒が関心を持てるように指導すべきである。例えば、他教科での学習内容、学校生活における活動、地域行事、生徒の体験等と関連付けることで、文法訳読に偏ることなく、互いの考えや気持ちを英語で伝え合う言語活動を中心とする授業を構成することが可能になる。 【文部科学省「教育課程の編成・実施状況調査(H22)」、「英語教育実施状況調査(H25)」】 (高等学校) 「英語を使って何ができるようになるか」という観点からの到達目標と評価 ○ 中・高等学校では、学習指導要領を踏まえ「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、学習到達目標(CAN-DO形式)を設定し、指導と評価方法を改善する取組が進んでいる。 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】 ○ 各学校では、4技能に関し、「英語を使って何ができるようになるか」という観点から、生徒に求められる学習到達目標(CAN-DO形式)を作成することが望まれる。その際、教科書・教材、生徒の学習状況、授業時数等を踏まえながら、学校及び学年・科目ごとの学習到達目標をできるだけ分かりやすく具体的に設定し、その目標に到達するための指導方法を工夫・改善することが期待される。 【学習到達目標(CAN-DO形式)を作成することの効果】 ○ 「CAN-DOリスト」は、もともとヨーロッパ共同体における複言語主義を背景とするCEFR(外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠)において学習到達指標として提案されたものであり、それが、我が国では学習到達目標として用いられていることに関して指摘があった(「詳細」を参照)。 ○ 学習評価においては、主体的な学びにつながる「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」を重視し、観点別学習状況の評価において、例えば、「外国語を用いて~ができる」とする観点を「外国語を用いて~しようとしている」とした評価を行うことによって、生徒自らが主体的に学ぶ意欲や態度などを含めた多面的な評価方法等を検証し、活用することが必要である(「詳細」を参照)。 小学校における評価の取扱い○ 小学校において、中学年では、外国語学習の初期段階であり、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成に重点を置いて、発達段階を踏まえた具体的な学習評価の在り方を検討する必要がある。 ○ また、小学校高学年での評価に当たっては、外国語学習の初期段階であることを踏まえ、語彙や文法等の知識の量ではなく、パフォーマンス評価等を通して、 言語や文化に関する気付き、 コミュニケーションへの関心・意欲、 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度、 「聞くこと」「話すこと」などの技能、 を評価することも考えられる。その際、学習者に過度の負担とならないように配慮しなければならない。 ○ なお、中学校における入学者選抜に外国語を課すことは望ましくないとの指摘があった。今後、小学校における外国語学習の趣旨を踏まえ、学習者に過度の負担とならないように十分に配慮して検討することが必要である。このことは、小学校と中学校の接続の在り方を検討する際にも極めて重要である。 (※パフォーマンス評価とは、知識やスキルを使いこなす(活用・応用・総合する)ことを求めるような評価方法(問題や課題)であり、様々な学習活動の部分的な評価や実技の評価をするという複雑なものまでを含んでいる。また、筆記と実演を組み合わせたプロジェクトを通じて評価を行うことを指す場合もある。 (出典:文部科学省「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会-論点整理-平成26年3月31日:42ページ) ) 改革3.高等学校・大学の英語力の評価及び入学者選抜の改善○ 英語力の評価及び入学者選抜における英語力の測定については、4技能の総合的なコミュニケーション能力が適切に評価されるよう促す。 ○ 各大学等のアドミッション・ポリシーとの整合性を図ることを前提に、入学者選抜に、4技能を測定する資格・検定試験の更なる活用を促進。そのため、協議会による適切な資格・検定試験の情報提供、指針づくり等が早急に進められるべき。 ○「達成度テスト」の具体的な検討を行う際には協議会の取組を参考に英語の資格・検討試験の活用の在り方も含め検討することが必要。 英語力の評価及び入学者選抜における4技能のコミュニケーション能力の評価 ○ 生徒の4技能の英語力の測定及び学習状況に関する現状・課題を把握・分析し、それらの結果を活用することにより、教員の指導改善、生徒の英語力を向上に生かすことにつなげることが必要である。 ○ 現在の大学入学者選抜において、4技能全てを測定する試験はほとんど行われていない(高等学校入学者選抜では、一部の学校においては面接・適性検査と併せて「話す力」を確認している)。また、資格・検定試験を活用している事例は、大学入学者選抜では740校中265校(平成25年度大学入学者選抜)、高等学校入学者選抜では国立2校、公立の高等学校では現時点まで存在しない。 ○ 各大学等における入学者選抜の改善を促しつつ、各大学の入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)との整合性を図ることを前提に、入学者選抜において、英語力を測定する資格・検定試験のうち4技能を適切に測定する試験の活用が奨励されるべきである。 【指針づくりに向けて想定される検討項目の例】 ○ 今後、具体的な検討が行われる「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)/(発展レベル)(仮称)」について具体的な検討を行う際には、前述のような取組を参考に資格・検定試験の活用の在り方について検討が求められる。 大学及び高等学校入学者選抜における学力検査等の在り方の改善○ また、この協議会において、現状の学力検査等における英語問題の在り方の調査・分析等を行い、得られた結果が大学、高等学校等において活用が図られるよう広く情報発信等を行う。 ○ なお、大学入学者選抜の在り方を抜本的に見直すべきとの観点や、資格・検定試験の活用に関する協議会の必要性や取組を明確にすべきとの指摘があった(「詳細」を参照)。 改革4.教科書・教材の充実○ 小学校高学年で教科化する場合、学習効果の高いICT活用も含め必要な教材等を開発・検証・活用する。 ○ 教科書を通じて、説明・発表・討論等の言語活動により、思考力・判断力・表現力等が一層育成されるよう教科用図書検定基準の見直しに取り組む。 ○ 国において音声や映像を含めた「デジタル教科書・教材」の導入に向けて検討を進める。 ○ ICT予算に係る地方財政措置を積極的に活用し、学校の英語授業におけるICT環境を整備。 教科書の改善 ○ 小学校中学年では、発達段階に応じた外国語活動に必要な教材を開発する。小学校高学年では、教科化に伴って、教科書の整備が必要となるが、教科書が整備されるまでの間、国において、新たな教材を開発・検証・配布する必要がある。 ○ 現在の中・高等学校の教科書には、文法事項を中心とした言語材料の定着を図る様々な活動に分量の多くがとられているため、言語材料を活用しながら、説明・発表・討論を通じて、思考力・判断力・表現力等を育成するような言語活動の展開が十分に意識されていないものも見られる。教科書等の作成・活用に当たり、次期学習指導要領の改訂において、そのような趣旨をより徹底するとともに、教科用図書検定基準の見直しに取り組むことが適当である。 ICTの活用○ 先進的な取組を行う学校では、タブレット、PC、電子黒板、テレビ会議システム等を活用し、教室内の授業や他地域・海外の学校との交流において、意見交換・発表等の互いを高め合う学びを通じて、思考力・判断力・表現力等を育成する取組が行われている。 ○ ICTを効果的に活用することによって教育上の効果が期待される。そのため、今後、国において「デジタル教科書・教材」の導入に向けて検討を進める。また、デジタル教科書・教材が導入される際には、教科用図書検定の対象となる教科書には音声や映像データが含まれるという考え方を明確にする。 ○ 公立学校におけるICTの環境整備と活用は、一部の学校・地域では進んでいるが、全国的には十分とは言えず、ICTの環境整備の充実を一層促す必要がある。 ○ 小学校の中学年では、主に学級担任がALT等とのティーム・ティーチングも活用しながら指導し、高学年では、学級担任が英語の指導力に関する専門性を高めて指導する、併せて専科指導を行う教員を活用することによる指導体制を構築。2019(平成31)年度までに、すべての小学校でALTを確保できる条件を整備。小学校教員が自信を持って専科指導に当たることが可能となるよう、「免許法認定講習」開設支援等による中学校英語免許状取得を促進。 ○ 教職課程において英語力・英語指導力を充実する観点から改善。今後、教員養成の全体の議論の中で検討が必要。 ○ 現職教員への研修は、教育委員会と大学・外部専門機関等との連携体制を構築し、継続的な現職研修や養成カリキュラムの開発・実施につなげ改善・充実。 指導体制の強化 ○ 各地域の大学や外部専門機関との連携による研修等の実施や、各地域の指導的立場にある教員が英語教育担当指導主事や外部専門家等とチームを組んで指導に当たるなど、地域全体の指導体制を強化する必要がある。 ○ 各学校では、校長のリーダーシップの下で、英語教育の学校全体の取組方針を明確にし、中核教員等を中心とした指導体制の強化に取り組むことが重要である。 ○ 小学校では、現行の学習指導要領において、 指導計画の作成と授業は、学級担任の教師又は外国語活動を担当する教師が行い、 授業の実施に際しては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに地域の実態に応じて外国語に堪能な地域の人々の協力を得るなどにより、 指導体制を充実することとされている。 【文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」】 ○ そこで、小学校では、中学年と高学年の接続が円滑になされることを前提に、 中学年では、主に学級担任が、外国語指導助手(ALT)や英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングも活用しながら指導し、 高学年では、学級担任が英語の指導力に関する専門性を高めて指導する。あわせて、専科指導を行う教員を活用することにより、専門性を一層重視した指導体制を構築する必要がある。 また、小学校教員が自信を持って専科指導に当たることが可能となるよう必要な研修を充実するとともに、「免許法認定講習」の開設支援等による中学校英語免許状取得を促進する。 ○ なお、教員免許を有しない者のうち十分な英語力・指導力を有する人材を、特別免許状を積極的に授与した上で活用するとともに、英語が堪能な地域人材や英語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用する方策を講じることも検討する。 ○ また、中・高等学校では、英語の指導に求められる指導体制を一層強化するため、現職教員に対する研修を充実させる。また、習熟度別指導、少人数指導、ティーム・ティーチング等の実施を通じてきめ細かな指導が行われるようにする環境整備を進める。 ○ ALTについては、地域や学校、教員によりその取組に差(地域間の格差(半年に1回程度しか訪問がない学校もあり)があり、特に小学校ではALTに指導を任せてしまう事例もある。 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】 そのため、外国人講師、ALT、地域人材等の活用など、教員とのティーム・ティーチングなどの質を確保しつつ、指導体制を充実させる必要があり、少なくとも、小学校の次期学習指導要領の実施が想定される2020(平成32)年度の前年度までに、すべての小学校にALTが確保できるようにする必要がある。その中で、JETプログラムについては、地方公共団体における採用数がピーク時よりも減少している中で、集中的に配置支援を行いながら、その採用を促すことが必要である。 教員養成と研修○ 多くの現職教員が、自分が受けてきた英語教育とは大きく異なる方法で指導や評価を行うことが求められ、そのことに対応できる教員を養成するための研修が課題となっている。 ○ 小学校の教職課程では、児童に英語を指導するのに必要な英語コミュニケーション能力を身に付ける授業や英語指導法に関する授業の履修が行われるようにするための方策を検討する。また、養成段階において、基本的な英語音声学、実際の場面で使うことができる語彙・表現、文構造、文法に関する理解と運用、異文化理解、発達段階に応じた適切な指導法、教材開発、小学校における教室運営など今まで以上に実践的な内容を取り扱うべきである。 ○ 中・高等学校の教職課程では、英語力・英語指導力を強化するという観点から改善・見直しが必要である。 英語音声学、第二言語習得理論を含めた英語学 4技能を統合的に指導する英語コミュニケーション の科目が充実されることが期待される。 ○ また、在学中に、海外での留学を通じて、英語力・指導力を高めるとともに、異文化理解・異文化コミュニケーションへの認識を深めることも重要である。文部科学省で進めている「トビタテ!留学JAPAN」などを含め、在学中の海外留学を積極的に奨励する。 ○ 将来の小学校における外国語教育の充実や、中・高等学校における英語教育の高度化に向けて、平成26年度から、国において外部専門機関と連携して研修を実施している。また、自治体における研修への補助も開始した。この研修に参加することにより、多くの参加者の英語力が向上し、「これからの授業を英語で実施したい」と考える教員が増加している。 【英語教育推進リーダー中央研修に参加した小学校教員へのアンケート(H26)】 ○ 「第2期教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)では英語教員に求められる英語力の目標(英検準1級程度又はTOEFL iBT80点程度以上等)を掲げており、上記の取組を通じて、養成段階における教員志望者の英語力をこうした水準にしていくことが望まれる。 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)】 3 英語教育の在り方に関する有識者会議における審議の詳細 1. 英語教育改革の背景 (1)経緯 ○ グローバル化が進展する中で求められる人材育成に対応するため、小・中・高等学校を通じた英語教育においては、教育課程の改善・充実が図られてきた。 (※1 「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」(平成15年3月)、「国際共通語としての英語力向上のための五つの提言と具体的施策」(平成23年6月)において今後の英語教育の方向性が提言された。) ○ これらを踏まえ、国による研修支援や先進的な取組への支援を行うとともに、教育委員会や学校においては、教員及び生徒の英語力などの目標を設定し、研修の充実や外国語指導助手の配置などに取り組んできた。一方で、教員の指導力・内容、教科書・教材、指導体制に関する多くの課題が指摘されている。 ○ このような中で、第2次安倍内閣に設置された教育再生実行会議では、平成25年5月の第3次提言(「これからの大学教育等の在り方について」)において、グローバル化に対応した小学校英語学習の早期化、教科化を含めた初等中等教育段階からの英語教育の抜本的拡充について検討が求められ、同月閣議決定された第2期教育振興基本計画にも明記された。 ○ また、教育再生実行会議では、平成26年7月の第5次提言(「今後の学制等の在り方について」)において、英語などの教科指導の専門性に応じた教育の充実、小学校と中学校の連携による英語教育の抜本的充実の在り方、教員養成の在り方等を検討する必要性が指摘された。 ○ 文部科学省より、平成25年12月13日に「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が公表され、同計画において示された方向性について、その具体化に向けて専門的な見地から検討を行うため、平成26年2月に「英語教育の在り方に関する有識者会議」が設置され、小・中・高等学校を通じた英語教育改革について、これまで9回の審議を重ねており、そこで交わされた議論について審議のまとめとして整理した。 ○ 同有識者会議の下に、「英語力の評価及び入試における外部試験の活用に関する小委員会」及び「指導体制の在り方に関する小委員会」が設置され、次期学習指導要領の改訂も視野に入れた新たな英語教育の目標・内容などの議論に沿って、これまでの取組の現状と課題を踏まえながら、専門的・技術的な議論を行った。 ○ なお、審議している内容は、英語教育の改善・充実のため直ちに取り組む必要がある内容のほか多岐にわたるが、このうち教育課程に関わる事項については、次期改訂に向けた教育課程全体の見直しの中で、また、教員養成に関わる事項については、教員養成に関する全体の議論の中で更に検討が行われ、必要な取組を進めることが期待される。 (2)英語教育改革の背景(グローバル化の進展の中での英語力の重要性) (※2 平成25年6月に閣議決定された教育振興基本計画においては、グローバル化が加速する中で、日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できるグローバル人材の育成が重要であるとの指摘がなされ、国際共通語である英語力の向上などが求められている。) ○ これからは、異文化理解や異文化コミュニケーションはますます重要になる。その際に、国際共通語としての英語力の向上は日本の将来にとって不可欠であり、アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべきである。今後の英語教育改革においては、一定の基礎的な知識・技能とそれらを活用して主体的に課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を育成することは、児童生徒の将来の可能性の広がりのために欠かせない。 ○ 我が国では、現状の日常生活においては、人々が英語をはじめとする外国語を使用する機会は限られている。しかしながら、東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年はもとより、現在、学校教育で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍するであろう2050(平成62)年頃には、我が国は、多文化・多言語・多民族の人たちが、協調と競争する国際的な環境の中にあることが予想され、そうした中で、国民一人一人が、様々な社会的・職業的な場面において、外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定される。母語教育に加え、外国語教育の重要性が一層高まるのである。 ○ 外国語教育に当たり、母語に関する教育との連携を通じて、「ことば」への関心を高める工夫が重要であるとの指摘があった。 ○ 外国語には英語以外にも様々な言語が存在し、コミュニケーションの手段という意味ではそれぞれ重要ではあるが、グローバル化社会において英語が国際共通言語として重要な役割を果たしていることから、英語教育改革を一層推進するための提言をとりまとめることとする。 (これまでの英語教育の改革を経た更なる改善) ○ 現行の学習指導要領は、発達の段階に応じて言語や文化についての理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、4技能を総合的に育成することにより、コミュニケーション能力を育成することを重視している。また、児童生徒が生涯にわたり英語を学習する基盤が培われるよう、基礎的・基本的な知識・技能の習得とともに、思考力・判断力・表現力等を育むために、発表や討論など知識・技能の活用を図る学習活動を発達段階に応じて充実させてきた(※3)。 (※3 学校教育法第30条2項(抜粋)においては、「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。」と規定された。同規定について、中・高等学校も準用。) ○ 前述のような課題が指摘される現状を踏まえ、コミュニケーション能力の育成を意識した効果的な教育が行われるようにする。このため、これまでの英語教育の成果・課題や、英語を外国語として学ぶ諸国における取組状況とその背景などを改めて踏まえた目標・内容などの改善・充実が必要である。 ○ このような観点から、更なる英語教育の充実を図るため、小学校中学年における外国語活動の導入、高学年における教科としての教育課程上の位置付けや、中・高等学校における言語活動の高度化に向けた検討を、より専門的な視点から行い、学習指導要領の改訂に向けた検討に生かすことが必要である。 ○ その際、英語教育を通じて育成すべき資質・能力とともに、これらを育成するために必要な小・中・高等学校を通じた一貫した目標・内容と学習評価の在り方について一体的に見直しを行うことも検討する必要がある。「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、より構造的で明確なものとし、効果的なコミュニケーション能力の育成を意識した取組を促進することが必要である(※4)。 (※4 「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会-論点整理-」(平成26年3月)において、「今後、学習指導要領の構造を、1.児童生徒に育成すべき資質・能力を明確化した上で、2.そのために各教科等でどのような教育目標・内容を扱うべきか、3.また、資質・能力の育成の状況を適切に把握し、指導の改善を図るための学習評価はどうあるべきかといった観点から見直す必要がある。」との指摘がなされている。) ○ これまでの成果と課題を踏まえながら、小・中・高等学校が連携し、一貫した英語教育の充実・強化のための改善が求められる。その際、英語の4技能を活用してコミュニケーションを行う言語活動を一層重視し、小・中・高等学校を通じて、日常の教育活動においては、発音や文法等の間違いを恐れず、積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとする態度を育成する必要がある。 ○ 教科等を横断して、児童生徒の思考力、判断力、表現力等を育むため、言語に対する関心や理解を深め、言語に関する能力を育成できるよう、更に言語活動を充実することが必要である。 ○ これらの取組と併せて、国際社会に生きる日本人として、日本人のアイデンティティを育成するため、我が国の歴史・伝統文化等に関する学習の一層の充実が必要である。 ○ 以上のような背景を踏まえ、今後の英語教育に必要な教員の英語力・指導力向上のための改善・充実を図るために必要な1.指導・内容、2.教科書・教材、3.指導体制、4.今後の英語教育に必要な教員の養成・採用・研修の在り方、及び5.英語教育における外部人材の確保などに関する今後の方向性について検討を行った。 2. 必要な改革について 改革1.国が示す教育目標・内容の改善 (1)現状と成果(現行の学習指導要領) ○ このねらいを実現するため、学習指導要領に、 平成23年度より小学校5、6年生において、コミュニケーションの能力の素地の育成をねらいとして、外国語活動を週1コマ実施すること 中学校では授業時数を週3コマから週4コマ(約3割増:105時間⇒140時間)へ充実し言語活動を各領域で1項目追加するなど充実を図るとともに、従来の「聞く」「話す」を重視した指導から4技能のバランスが取れた指導への改善を図り、教材の題材には日常生活、風俗習慣、物語、地理、歴史、伝統文化や自然科学などから、生徒の発達段階、興味関心に即して適切な題材を取り上げること 高等学校では選択必履修から「コミュニケーション英語1」の共通必履修に変更するなど科目構成を変更し、生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とし、その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮すること を明示した。 (生徒の英語力の目標設定) (※5 「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」(平成15年3月)では、国民全体に求められる英語力として、「中学校・高等学校を卒業したら英語でコミュニケーションができる」ようにすると同時に、職業や研究になどの仕事上英語を必要とする者には、基礎的な英語力を踏まえつつ、それぞれの分野において必要な英語力を身に付けるようにし、日本人全体として、英検、TOEFL、TOEIC等の客観的指標に基づいて世界平均水準の英語力を目指すことが指摘された。併せて中学校卒業時には卒業者の平均が英検3級程度、高等学校卒業段階では、卒業者の平均が英検準2級~2級程度)を目指す目標が提示された。) ○ これらの生徒の英語力の目標については、「第2期教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)において、英語教育の成果指標として、中学校卒業段階で英検3級程度以上、高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合を50%とすることとされている。 (小学校の成果) (※6 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」) ○ 先進的な事例においては、小学校低学年、中学年から外国語活動を取り入れるとともに、中学校とのカリキュラム上の接続を意識した取組などが行われており、生徒の英語学習に対する意欲が中学校以降も維持され、英語力が向上している状況が見られる。 (中学校の成果) ○ 先進的な実践事例においては、単元目標と関連付けながら、考えながら話す言語活動や、小学校・高等学校との接続を意識した授業、高等学校と連携した学習到達目標の作成が行われている。 ○ また、教育委員会が中心となって県下の全中学校がCAN-DO形式で学習到達目標を設定することで、年間指導計画を見直す視点や、指導と評価の改善につなげる視点を持つようになるなどの成果が見られる。 (高等学校の成果) ○ 生徒が英語に触れる機会を充実し、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことが浸透しつつある。普通科等の授業において、発話を「おおむね英語で行っている」又は「発話の半分以上を英語で行っている」教員は、平成22年度の「英語1」では15%だったが、平成25年度の「コミュニケーション英語1」では53%、同「英語表現1」では47%と大きく増加している。 ○ 授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、生徒の英語による言語活動を授業の中心としようとする姿勢が見られる。普通科等の授業において、「おおむね言語活動を行っている(75%以上)」又は「半分以上の時間、言語活動を行っている(50~75%程度)」のは、平成25年度の「コミュニケーション英語1」担当教員が41%、同「英語表現1」担当教員が4%となっている。 ○ 外国語を用いて何ができるようになるかという観点から、各学校においてより具体的な学習到達目標を設定しようとする傾向が見られる。CAN-DO形式で学習到達目標を設定している普通科等の学科は、旧課程の平成23年度は4%、新課程の平成25年度は34%と大きく増加している。 ○ 先進的な事例においては、CAN-DO形式の学習到達目標を作成することによって、教科書や教材を、目標を達成するために積極的に活用したり、教員間で指導や評価の内容・方法が均質化されたりした例や、それらのことによって生徒の英語力が向上した例が見られる。 ○ また、教育委員会が中心となって域内の全高等学校がCAN-DO形式による学習到達目標を設定する取組を推進するとともに、中・高等学校の接続を意識した研修を実施することで、年間指導計画を見直す視点や、指導と評価の改善につなげる視点を持つようになるなどの成果が見られる。 (学習到達目標と学習評価について) ○ そのような中、「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」(H23)等が示されたこともあり、中・高等学校において「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、4技能に関する学習到達目標を、いわゆるCAN-DO形式で設定する取組が進んでいる(平成25年度末までに、中学校の17%、高等学校の34%で作成されており、これから設定する予定の学校を含めると6~7割に達する)。 ○ 教科の目標に掲げられている「言語や文化についての理解」や、「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成」などについては、観点別学習状況の評価において「言語や文化についての知識・理解」及び「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」などが観点例として示され、中・高等学校においては、そのうち、「外国語表現の能力」や「外国語理解の能力」の観点と併せて評価に活用する取組が進められてきた。 ○ このような取組を進めることを通して、一部の中・高等学校において、指導計画・評価と関連した授業改善や英語力の向上などの成果が見られるようになった。 (2)課題(小学校の課題) ○ 小学校高学年は、抽象的な思考力が高まる段階であるにも関わらず、外国語活動の性質上、体系的な学習は行わないため、児童が学習内容に物足りなさを感じている状況が見られるとともに、中学校1年生の生徒の7割以上が小学校で「英語の単語・英語の文を読むこと」、8割以上が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答していることから、中学校において音声から文字への移行が円滑に行われていない場合が見られる。 ○ 先進的な事例では、小学校低学年、中学年から高学年まで外国語活動に取り組む学校があるが、これらの中には高学年で学習意欲が低下する傾向が見られる例もある。そのような課題に対応して、高学年に「読むこと」及び「書くこと」を系統的に指導する教科型の外国語教育を導入した例では、児童の外国語の表現力、理解力が深まるとともに学習意欲の向上が認められる取組もある。 ○ このように、外国語活動は、児童が自らの考えを英語で表現するための十分な語彙や表現を身に付けることは意図されていないが、先進的な事例の中では、中学年よりコミュニケーションに積極的に関わろうとする態度が育成され、高学年においてコミュニケーションの基礎を養う活動が行われている。今後、小学校中学年から学習を開始し、英語学習への動機付けを更に高め、コミュニケーション能力の素地を養うことで、小学校卒業時までに慣れ親しみや体験的理解に加えてコミュニケーション能力の基礎を身に付けさせることも期待される。 ○ 小・中連携の観点からは、小学校において中学校での指導を意識した指導が、中学校においては外国語活動を踏まえた指導が不十分である。 ○ 小・小連携、小・中連携の研修では、「学級担任等による外国語活動の参加・協議」や「外国語活動の在り方に関する共通理解、具体的な活動についての共通理解や体験」などに関する研修を4~5割程度の学校で実施している。一方、年間指導計画や単元計画指導案の作成、検討などを実施している学校は全体の1~2割弱となっている(※7)。 (※7 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」) (中学校の課題) ○ また、 教員の英語使用状況において、「発話の半分以上を英語で行っている」のは、中学校1学年は44.5%、2学年は42.9%、3学年は41.2% 生徒が英語で言語活動をする場面を半分以上設定しているのは、中学校1学年は52%、2学年は47%、3学年は43% 英検準1級程度以上の教員の割合は27.9% となっており、生徒が英語に触れる機会を充実する観点から、一層の取組を推進する必要がある。 ○ CAN-DO形式での学習到達目標は、17.4%(※8)の学校が設定し、その中で、達成状況を更に把握している学校は66.8%にとどまっており、全ての学校において設定する地域と設定していない地域があることから今後の指導における影響が大きく、学校の指導改善等につながる取組として促す必要がある。 (※8 文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」) (高等学校の課題) ○ 英検準1級以上等を取得している教員の割合は、平成22年度が49%、平成25年度が53%で、3年間で4%の伸びにとどまっており、教員自身の英語力を更に引き上げる必要がある。 ○ CAN-DO形式での学習到達目標の設定は、平成23年度の4%から平成25年度の34%に増加はしているが、域内全ての高等学校において設定を終えている地域と現時点でほとんど設定が進んでいない地域があるなど、ばらつきが大きいことから今後の指導における影響が大きいと考える。 ○ CAN-DO形式で学習到達目標を設定はしていても、それが実際の指導や評価において十分には活用されていない現状がある。学習到達目標を設定する意義や方法とともに、年間指導計画・単元計画の作成や評価において活用されるよう周知する必要がある。 ○ 中・高等学校でそれぞれどのような指導と評価が行われているかについてお互いに情報不足で、中・高等学校の連携が不十分であるとの指摘もある。 (共通する課題) 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】 ○ 中・高等学校については、英語教育の目標としてコミュニケーション能力を身に付けることを設定しながら、「何ができるようになったか」よりも、「どれだけ語彙や文法等の知識を身に付けさせたか」を中心とした授業が行われているとの指摘がある。この場合、学習を通じて「知識として何を知ったか」が重視されがちとなり、コミュニケーション能力の育成を意識した取組も不十分であるとの指摘もある。 ○ 小・中連携、中・高連携が十分でなく、各学校種間の学びが円滑に接続していないという状況も見られる。 (3)改善の方向 小・中・高等学校共通の事項○ 小・中・高等学校を一貫して外国語の「コミュニケーション能力」を養うため、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」及び「書くこと」のバランス良い4技能の育成を踏まえつつ、各学校段階における発達段階に応じた育成すべき資質・能力を育む観点から、教育目標・内容の明確化や、目標・内容に沿った指導方法の見直し、学習評価の改善等を一体的に図るという方向で検討する。 ○ また、これまでの英語教育の成果と課題を踏まえ、各学校が適切に学習到達目標を設定し、これらの資質・能力についての達成状況を明確化できるようにするため、国として、小・中・高等学校において達成を目指すべき教育目標を、より具体的な形で4技能ごとに一貫した指標として示す方向で検討する。その際、各学校における学習到達目標の設定、及び評価の取組による成果・課題を踏まえ、「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」などについては、観察等による定性的な評価が適切に行われることが必要なものと、「○○ができるようにする。」と設定することがより効果的な目標設定の在り方について、引き続き検討を行う。 ○ 小・中・高等学校の連携、中・高等学校の連携などを意識した目標・内容を具体的に検討するとともに、中・高等学校の目標の高度化等の改善を踏まえ、それぞれの段階において言語の使用場面や働きを更に広げた言語活動を行うこととする。 ○ 学校における学習が、生涯にわたって、自ら外国語を学び、実際にコミュニケーションで使おうとする動機付けに結びつけ、維持するようにする。 (小・中・高等学校一貫した指標の形での教育目標の設定) ○ 小・中・高等学校を通じて体系的な教育活動を行うとともに、各学校における学習到達目標を設定した指導等の改善を更に進める観点から、今後、国において、これまでの取組を検証しつつ、小・中・高等学校において達成を目指すべき教育目標を、4技能ごとに一貫した指標の形で設定することについて検討を進める。このため、次期学習指導要領の改訂に向けた教育目標の見直しに資するよう、現行学習指導要領を基にした具体的な4技能ごとの一貫した教育目標を試行的に作成し、研究開発学校等における取組を促すとともに検証を行う(小・中・高等学校を一貫した教育目標・内容等のイメージは別添参照)。 (学習到達目標を設定する効果) 学習到達目標を設定することで、児童生徒にどのような英語力が身に付くか、英語を用いて何ができるようになるか、あらかじめ明らかにすることができる。また、そうした情報を児童生徒や保護者と共有することで授業のねらいが明確になるとともに、児童生徒への適切な指導を行うことができる。 特に、学習指導要領に基づいて学習到達目標を設定し、指導と評価を設定する際に、文法や語彙等の知識の習得にとどまらず、それらの知識を活用してコミュニケーションが図れるよう、4技能の総合的な能力の習得を重視することが期待される。 校内でも教員により指導方法が大きく異なることがある中で、学習到達目標の策定を通じて、教員間で、指導に当たっての共通理解を図り、均質的な指導を行うことができる。 評価が、面接・スピーチ・エッセイ等のパフォーマンス評価などによって「言語を用いて何ができるか」という観点からなされることが期待され、更なる指導と評価の一体化とそれらの改善につなげることができる。 ○ 一方で、学校における学習到達目標の作成に当たっては、以下の留意点が挙げられている。国や教育委員会は、そうした活動が円滑かつ効果的に進むよう支援していくことが必要となる。 学習到達目標に掲げられた内容を形式的に達成すればよいのではなく、授業を通じて教員が児童生徒の状況を把握しながら、英語力の向上を支援していくことが必要である。 学習到達目標を作成すること自体が目的となってしまわないように、研修等を通じて、教員の共通理解を図ることが求められる。 小・中・高等学校を通じた学習到達目標の設定に当たっては、早期の段階から高度な水準を求めることがないよう計画し、児童生徒の学習意欲を維持・向上させるような配慮が必要である。 学習到達目標が設定されていく中で、それらと入学者選抜や資格・検定との関わりがどうなっていくか検討する必要がある。 ○ 各学校においては、学習指導要領の内容に基づき、生徒に求められる英語力を達成するための具体的な学習到達目標をCAN-DO形式を含めた形で設定する。その際、教科書・教材、生徒の学習状況、授業時数等を踏まえつつ、学校及び各科目の単元ごとの学習到達目標を具体的に設定し、指導方法や評価方法の工夫・改善を図る。 (生徒の英語力の目標設定) (※9 同閣議決定において、中学校卒業段階で英検3級程度以上、高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合を50%とすることとされている。) ○ なお、平成25年12月に文部科学省で取りまとめた「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では、今後の新たな方向性として、最終的に高等学校卒業段階における目標にCEFR (※10)B1~B2程度(英検2~準1級、TOEFL iBT60点前後以上等)が示されている。このような目標を掲げる場合、学校教育だけで全ての生徒が達成する目標として設定するのは難しく、学校外で英語に触れる機会、様々な学習の場や支援を得ながら高等学校卒業段階における英語力の目標として設定することに留意すべきとの指摘があった。 (※10 CEFR(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment「外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」)は、語学シラバスやカリキュラムの手引きの作成、学習指導教材の編集、外国語運用能力の評価のために、包括的な基盤を提供するものとして、20年以上にわたる研究を経て2001年に欧州評議会が発表。) ○ CEFRを日本の英語教育の中でどのような位置付けをするかということについては、更にどのような評価を行い、位置付けるのかについて体系的な議論が必要であるとの指摘があった。 ○ 生徒の学習意欲を高めながら英語力の向上を図るため、各学校における取組も踏まえつつ、グローバル化に対応した世界標準の英語力育成を目指すことが必要との指摘もあった。 小学校における改善の方向○ これまでの成果・課題を踏まえ、今後の小学校中学年における外国語活動の導入と、高学年でのより系統性を持たせた体系的な指導を想定し、次のような目標・内容の改善を図る。 (小学校中学年) 例えば、英語学習に対するモチベーションや、聞き取り、発音に関して効果があると考えられること、また音声を中心に体験的に理解を深めることは、小学校中学年の児童の発達段階により適していると考えられる。 このため、中学年では、言語や文化についての体験的理解や、外国語の音声等への慣れ親しみ、コミュニケーションへの積極性を中心とする「外国語活動」(活動型)を行い、コミュニケーション能力の素地を養うこととする。 (小学校高学年) 高学年においては、中学年から中学校への学びの連続性を持たせながら、4技能を扱う言語活動を通して、より系統性を持たせた指導(教科型)を行う。このため、外国語の基本的な表現に関わって聞くことや話すことなどのコミュニケーション能力の基礎を養うこととする。そのため、より系統性を持たせた体系的な指導を行う教科として位置付け更に専門的に検討すべき。 その際、単に中学校で学ぶ内容を小学校高学年に前倒しするのではなく、学校内外の影響を踏まえながら、小学校の発達段階に応じた「読むこと」、「書くこと」に慣れ親しみ積極的に英語を読もうとしたり、書こうとしたりする態度の育成を含めた初歩的な運用能力を養うことが考えられる。 文構造など、言葉の規則性に関する気付きを意図的に促す指導や、文字の認識、単語への慣れも加えることで、発達段階に応じて、知的好奇心に応えるものとする。現在、中学校での学習内容となっているものとして、例えば、文字や符号の識別は、小学校高学年で扱うことについて検討する。 他教科等と連動した学習内容や言語活動を設定することにより、思考力・判断力・表現力や主体的に学習する態度を身に付けることも重視する。 小学校高学年における指導語彙数は、例えば、「Hi, friends!」を活用したこれまでの成果等を踏まえながら語彙数などを検討し、中学校においてこれらの語彙も含め更なる定着を図ることとする。 (小学校における授業時数) ○ また、現行では小学校高学年で外国語活動を週1コマ、中学校では教科の英語を週4コマ行うことになっている。今後、小・中学校の学びをつなげていく必要があるが、その差を高学年においてどのように埋めていくのかということが、教科としての目標・内容を検討する重要な点となるとの指摘があった。 (母語の教育と「ことば」への気付き) 小学校段階で母語を利用して、「ことば」の仕組みや働きに気付かせること 世界に多くの言語があることを理解させる配慮が必要であること 豊かな「ことば」への気付きは母語と外国語の効果的な運用を可能とすること が重要であり、「ことば」への関心を高めることが必要であるとの指摘があった。 中学校における改善の方向○ 義務教育終了段階として小学校での学びの連続性を図りつつ、中学校において身近な事柄についてコミュニケーションを図ることができるようにするとともに、高等学校における目標の高度化に向けた基礎を培う観点から、次のような改善を図る。 「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」などについて、中学校の発達段階に応じた、より具体的に身近な話題についての理解や表現、簡単な情報交換ができるコミュニケーション能力を養う。 英語の教科書の本文や、そこで取り上げられている題材や言語材料を、生徒が関心を持てるような身近な話題と関連付けて指導すべきである。例えば、学校生活における活動、地域行事、生徒の体験、他教科での学習内容等と関連付けて、互いの考えや気持ちを英語で伝え合う言語活動を中心とする授業を行うことを重視する。また、授業を実際のコミュニケーションの場面とする観点から、中学校においても授業を英語で行うことを基本とする(※11)。 小学校高学年の教科型導入を踏まえ、中学校ではより多くの英語に触れることにより、学習内容の着実な定着を図る。また、コミュニケーションを円滑に図るために必要とされる基本的な文法事項については中学校で一通り活用できるようにする。 日本人としてのアイデンティティに関する教育の充実(伝統文化、歴史の重視等)を図る。 (※11 「授業は英語で行うことを基本とする」こととは、教師が授業を英語で行うとともに、生徒も授業の中でできるだけ多くの英語を使用することにより、英語による言語活動を行うことを授業の中心とすることである。これは、生徒が、授業の中で英語に触れたり英語でコミュニケーションを行ったりする機会を充実するとともに、生徒が英語を英語のまま理解したり表現したりすることに慣れるような指導の充実を図ることを目的としている。英語に関する各科目の「特質」は、言語に関する技能そのものの習得を目的としていることである。しかし、このような技能の習得のために必要となる、英語を使用する機会は、我が国の生徒の日常生活において非常に限られている。これらのことを踏まえれば、英語に関する各科目の授業においては、訳読や和文英訳、文法指導が中心とならないよう留意し、生徒が英語に触れるとともに、英語でコミュニケーションを行う機会を充実することが必要である(出典:高等学校学習指導要領解説・外国語)。) 高等学校における改善の方向○ 高等学校段階における英語教育の多様性に対応した目標・内容の設定、及びそれらの高度化を図るとともに、中学校との円滑な接続を図る観点から、次のような改善を図る。 幅広い話題について抽象的な内容を理解できる、英語話者とある程度流暢(りゅうちょう)にやりとりができる能力を養う。 引き続き、授業を英語で行うことを基本とするとともに、言語活動の高度化(発達段階や、生徒の英語力等の状況に応じた発表、討論、交渉等)を図る。 例えば、社会的な話題や時事問題等の幅広い話題について情報や考えなどを的確に理解するとともに適切に伝え、英語を用いて課題解決していく力を育成するコミュニケーション能力を養う。 中学校で学習した語彙・表現・文法事項等に意味のある文脈の中でコミュニケーションを通して繰り返し触れることができるよう、様々な言語活動を工夫し、言語の運用能力を高める。 専門学科等におけるより専門性の高い内容を扱う科目設定等の在り方について検討が必要である。 改革2.学校における指導と評価の改善 (1)現状と成果(指導) ○ 小学校においては、児童や地域の実態に応じて目標を適切に定め指導計画を作成し、計画的、発展的に授業が行われるよう工夫することが求められている。さらに、外国語活動の指導に当たっては、配慮事項として、体験活動を生かすなど、児童の発達段階や特性等を考慮することが求められている。 ○ また、小学校の学習指導要領では、指導計画の作成や授業の実施において、学級担任の教師又は外国語活動を担当する教師が行うこととし、授業の実施に当たっては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに、地域の人々の協力を得るなど、指導体制を充実することとなっている。指導に当たり、学級担任を中心として英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングが定着しつつある。 ○ 中学校及び高等学校の教材については、コミュニケーション能力を総合的に育成するため、実際の言語の使用場面や言語の働きに十分配慮したものを取り上げるとともに、日常生活、風俗習慣、物語、地理、歴史、伝統文化や自然科学などの題材から、生徒の発達段階、興味関心に即して適切な題材を取り上げることとなっている。 ○ また、中学校においては、身近な話題から題材を工夫し、ペア・ワークやグループ・ワークなどを積極的に取り入れ、生徒が実際に英語を用いてコミュニケーションを行う取組も見られるようになった。 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】 ○ 高等学校では、「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、生徒の理解の程度に応じて、授業は英語で行うことを基本とする。その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮するものとする」とされている。 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】 ○ 中・高等学校では、生徒に求められる英語力を達成するための学習到達目標をCAN-DO形式で具体的に設定し、生徒の指導及び評価を一体的に行い、指導改善などに活用する取組が広がりつつある。 (学習評価) (※12 「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成22年3月:中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会)) ○ このことを踏まえ、平成22年通知(※13)では、「関心・意欲・態度」、「思考・判断・表現」、「技能」及び「知識・理解」に評価の観点を整理し、各教科等の特性に応じた観点を示している。これら評価の観点については、各設置者は、学習指導要領に示す目標を踏まえ、この通知で示された外国語活動や外国語の評価の観点を参考に設定することとされている。また、各学校においては、観点を追加して記入できることになっている。さらに、国立教育政策研究所の「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」では、各学校において学習評価を進める際の参考資料として、評価規準の設定の方法や評価方法等の工夫改善例が示されている(※14)。 (※13 平成22年5月11日「小学校,中学校高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善について」(文部科学省通知)) ○ 中・高等学校では各学校において「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、4技能に関する学習到達目標を、いわゆるCAN-DO形式で設定し、評価においても活用する取組が進んでいる。そのような取組の中で、複数の県の公立学校において、高等学校の英語の授業のかなりの部分が英語で行われ、自信をもって英語で発言する生徒が増えている事例も多い。 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】 ○ このような取組を通して、中・高等学校において、教員、生徒間において学習到達目標を共有し、課題を把握することで、指導と評価が一体的に行われ、授業改善や英語力の向上などの成果が見られるようになった。 (2)課題(小学校) ○ 小学校高学年は、抽象的な思考力が高まる段階であるにも関わらず、外国語活動の性質上、体系的な学習は行わないため、児童が学習内容に物足りなさを感じていることが指摘されている。また、中学校1年生の7割以上が小学校で「英語の単語・英語の文を読むこと」、8割以上が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答していることから、小学校・中学校の間で音声から文字への移行が円滑に行われていないとの指摘があった。 ○ 小・中連携の観点からは、小学校において中学校での指導を意識した指導が、中学校においては外国語活動を踏まえた指導が不十分である。また、小・中連携の取組の内容は、情報交換が多く、連携の効果が期待される取組を行っている例は少ない。 ○ 小・小連携、小・中連携の研修では、「学級担任等による外国語活動の参加・協議」や「外国語活動の在り方に関する共通理解、具体的な活動についての共通理解や体験」などに関する研修を4~5割程度の学校で実施している。一方、「年間指導計画」や「単元計画指導案」の作成、検討などを実施している学校は全体の1~2割弱となっており(※15)、効果的な指導法や指導計画の作成に関する研修機会は十分とはいえない。 (※15 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」) (中学校・高等学校) ○ 中・高等学校の教員の英語使用状況や(※16)、生徒が英語で言語活動をする場面の設定状況をみると、未(いま)だ英語によるコミュニケーション能力を育成するには十分ではない状況にある。生徒が英語に触れる機会を充実する観点から、教員自身の英語力を向上するとともに、英語で授業を行う取組を更に推進する必要がある。 (※16 授業において「発話の半分以上を英語で行っている」教員は、中学校1年生は44.5%、2年生は42.9%、3年生は41.2%、 ○ 特に、中学校では、文法訳読に偏った授業が一部の学校に見られ、また、小学校からの学びが円滑に接続されていないとの指摘があった。題材を工夫して生徒が興味・関心を持つ身近な話題について題材を工夫して実際にコミュニケーションを行うことが授業の中心となるよう改善する必要がある。 ○ CAN-DO形式での学習到達目標は、全ての学校において設定する地域と現時点でほとんど設定が進んでいない地域があるなど、ばらつきが大きいことから今後の指導における影響が大きいと考えられる(※17)。また、CAN-DO形式で学習到達目標を設定はしていても、それが実際の指導や評価において十分には活用されていない事例が見られる。学習到達目標を設定する意義や方法を周知するとともに、年間指導計画・単元計画の作成、学習評価において活用され学校の指導改善等につながる取組として促す必要がある。 (※17 中学校は17.4%の学校が設定し、その内、設定した学習到達目標の達成状況を把握している学校は66.8%にとどまっている。高等学校は平成23年度の4%から平成25年度の34%に増加している。) (CAN-DO形式での学習到達目標と学習評価) ○ CAN-DO形式の目標は、もともとヨーロッパの共同体の複言語主義を背景とするCEFRを参照して学習到達指標として提案されたものであり、それが我が国では学習到達目標、評価規準として用いられている。CAN-DO形式の目標を積極的に学習指導要領の中に導入するのであれば、CAN-DO形式の目標設定をどのように位置付けていくのか体系的な議論が必要であるとの指摘があった。 ○ 各学校の目標設定をCAN-DO形式に限定してしまうことによって、可視化された部分だけを評価するのではなく、可視化されていない部分も他の評価で保証されていることが必要である。 ○ 中・高等学校でそれぞれどのような指導と評価が行われているかについて互いに情報不足で、中・高等学校の連携が不十分であるとの指摘もある。発達段階によっても効果的な指導方法は異なることから、指導計画の作成や内容の扱いにおいて、学校段階間の学びの円滑な接続に関する課題について共有し、実際の指導・評価を改善する必要がある。 (3) 指導・評価に関する改善の方向(小・中・高等学校の共通事項) ○ 指導について、英語学習への動機付けを維持しつつ、児童生徒の学びが小・中・高等学校間で円滑につながるような指導を行うことが必要である。学習評価は、評価によって学習者に学ぶ意欲を喚起し、自信を持たせるとともに、今後の学習に向けた指針として示されることが重要である。学習指導要領に定める目標に準拠した評価では、教員に対し、児童生徒一人一人の学習の確実な定着のために意欲的に取り組めるような授業の計画と、指導の改善を継続的に行うことが教員に求められている。また、そのために評価方法の妥当性・信頼性を担保するための改善・工夫が必要である。 ○ 外国語活動・外国語の目標は、1.言語や文化に対する理解を深め、2.積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、3.「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」、「書くこと」などのコミュニケーション能力を養うこととされている。各学校では、学習指導要領の目標・内容に基づき、単元ごとの学習到達目標の設定と、それに沿った指導計画を作成するとともに、前述の1.から3.に沿った効果的な評価を行う必要がある。 ○ また、生徒に求められる英語力向上を達成するため、指導計画の作成に当たり、前述の3.の技能部分に係る具体的な学習到達目標はCAN-DO形式で設定する。その際、教科書等の教材、生徒の学習状況、授業時数等を踏まえつつ、それら全体構想を教員間で十分に共有しながら、学校及び学年・科目ごとの学習到達目標を設定し、指導方法や評価方法を工夫・改善する。 ○ 学校教育法第30条2項で示されている「主体的に学習に取り組む態度」(※18)を評価するには「関心・意欲・態度」において評価を行うこととされており、学力の重要な要素として評価を行う必要がある。このような観点から、英語教育の評価の観点である「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」について積極的に評価を行い、それらを育んでいくことは重要である。 (※18 中教審教育課程部会報告より「改正教育基本法においては、学校教育において自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視することが示されるとともに、学校教育法及び学習指導要領の改正等により、主体的に学習に取り組む態度が学力の三つの要素の一つとして示されている。また、我が国の児童生徒の学習意欲について課題がある状況を踏まえると、学習評価において、児童生徒が意欲的に取り組めるような授業構成と継続的な授業改善を教師に促していくことの重要性は高い、さらに、主体的に学習に取り組む態度は、それをはぐくむことが基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成につながるとともに、基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成が当該教科の学習に対する積極的な態度につながっていくなど、他の観点に係る資質や能力の定着に密接に関係する重要な要素でもある。」と指摘されている。) (CAN-DO形式での学習到達目標と学習評価) ○ このため、「関心・意欲・態度」以外の3つの観点のうち、その単元の最も重視したい観点に示されている評価内容として、例えば、「外国語表現の能力」として「○○できる」とする観点から評価を行う事項を、「関心・意欲・態度」の項目として「外国語を用いて○○しようとしている」と表現を置き換え、その単元において両面から評価を行うなど、生徒自らが主体的に学ぶ意欲や態度などを含めた多面的な評価方法等を検証し、活用することが必要である。 ○ 具体的な評価方法としては、筆記テストのみならず、面接、エッセー、スピーチ等のパフォーマンス評価、活動の観察等の効果的な評価方法から、その場面における生徒の学習状況を的確に評価できる方法を選択することが重要である。 ○ 小・中・高等学校における効果的な指導及び評価の在り方について、これまでの先行的な取組における成果・課題や、「英語教育強化地域拠点事業」(H26年度~)の状況を検証し、得られた結果を次期学習指導要領の改訂から全面実施に至るまで活用する。その際、評価が学びの改善につながるようなPDCAサイクルの構築を進める。 ○ 次のような方向性を踏まえつつ、今後、大学等と連携協力による小・中・高等学校を通じた先進的な指導・評価の取組を、国が積極的に支援する必要がある。 (小学校) ○ 小学校中学年から外国語教育を開始することを前提として、言語や文化についての体験的理解に加え、英語学習への動機付けを更に高め、コミュニケーション能力の素地を養うとともに、小学校高学年から卒業時までにコミュニケーションへの積極性やコミュニケーション能力の基礎を身に付けさせる指導法等の在り方について検討する。 ○ また、高学年においては、児童の英語学習への動機付けを維持しつつ、小学校の学びを中学校へ円滑に接続させるため、小学校と中学校の連携の効果が期待される相互乗り入れの授業、カリキュラムづくりの連携、共通理解を図り相互の効果的な指導計画作成などを行う合同研修などの具体的な小・中連携による指導を更に充実・強化していく必要がある。 ○ 小学校段階における評価の在り方については、先行事例における活動型及び教科型の評価の状況を検証するとともに、外国語学習の初期段階であることを踏まえ、中学年、高学年、それぞれの発達段階を踏まえた学習評価の在り方を検討する。小学校中学年では、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成に重点を置いて、これまでの高学年における外国語活動の実績を踏まえつつ、発達段階を踏まえた具体的な学習評価の在り方を検討する。 ○ 小学校高学年では、教科として位置付けるに当たり、英語の特性及び高学年の発達段階を踏まえながら、文章記述による評価(※19)や、数値等による評価など適切な評価方法について、学校教育全体の中でのバランスをとる方向で引き続き検討する。 (※19 平成20年中教審答申では、「小学校における外国語活動の目標や内容を踏まえれば一定のまとまりをもって活動を行うことが適当であるが、教科のような数値による評価はなじまないものと考えられる」と指摘された。) ○ なお、高学年においては、 語彙や文法の知識量ではなく、パフォーマンス評価等を通して、 言語や文化に関する気付き、 コミュニケーションへの関心や意欲、 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度、 「聞くこと」や「話すこと」などの技能、 について評価することも考えられる。 ○ また、中学校における入学者選抜に外国語を課すことは望ましくないとの指摘があった。小学校段階の外国語学習の趣旨を踏まえ、学習者に過度の負担とならないように十分配慮することが必要である。このことは、小学校と中学校の接続を検討する際にも極めて重要である。 ○ 小学校高学年の外国語が教科となった場合、中学校における入学者選抜における英語の扱いについて、引き続き慎重な検討が必要であるとの指摘があった。 (中学校・高等学校) ○ 高等学校でも、現行の学習指導要領に引き続き、授業を英語で行うことを基本とする。その際、その狙いが「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため」であり、また同時に「生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮する」ことを前提としていることを理解することが重要である。 ○ 中・高等学校では、目標・内容の改善・高度化に伴い、CAN-DO形式での学習到達目標設定、扱う言語活動の高度化(発表、討論、交渉等)に対応した指導、パフォーマンステストを活用した4技能の総合的な評価方法等について検討する。 ○ その場合、中・高等学校段階における評価の在り方については、コミュニケーションへの関心・意欲・態度とともに、「英語を用いて何ができるか」という表現力・理解力に関する視点も重視し、指導改善において活用する。パフォーマンス評価(※20)や観察等などの具体的な評価方法について検討を行う。検討においては、これまでの観点別学習状況の評価とともに、各学校におけるCAN-DO形式での評価及びパフォーマンステスト等を活用した効果的な評価の取組を検証し、それらの結果を広く普及・活用する。 (※20 パフォーマンス評価とは、知識やスキルを使いこなす(活用・応用・総合する)ことを求めるような評価方法(問題や課題)であり、様々な学習活動の部分的な評価や実技の評価をするという単純なものから、レポートの作成や口頭発表等により評価するという複雑なものまでを含んでいる。また、筆記と実演を組み合わせたプロジェクトを通じて評価を行うことを指す場合もある。 このパフォーマンス評価に当たって設定する「パフォーマンス課題」とは、様々な知識やスキルを総合して使いこなすことを求めるような複雑な課題であり、具体的には、論説文やレポート、展示物といった完成作品(プロダクト)や、スピーチやプレゼンテーション、協同での問題解決、実験の実施といった実演(狭義のパフォーマンス)を評価する課題である。(文部科学省「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会-論点整理-平成26年3月31日:42ページ)) 改革3.高等学校・大学における英語力評価及び入学者選抜の改善 (1)現状と課題○ 社会経済のグローバル化が急速に進展し、以前にも増して様々な分野で英語力が求められる時代になっており、実用的な英語力を身に付けることは、我が国の子供たちが各界で活躍する可能性を大きく広げるとともに、日本の国際競争力を高めていく上で重要な要素になっている。 ○ このような環境の中で、実用的な英語力を向上するためには、世界標準を視野に入れた目標設定を行うとともに、小・中・高等学校を通じてコミュニケーション能力に必要な「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の4技能が総合的に育成され、その各技能が適切に評価されることが必要である。 ○ 今後、大学入試センターの蓄積や既に4技能に対応した試験を実施している大学の取組の実績等を参考にしながら、4技能型に対応した大学入試センター試験及び個別大学の学力検査の在り方について検討することが必要である。一方で、4技能に対応した学力検査を早期に導入するには様々な課題がある。そのため、段階的に英語の資格・検定試験を活用し、最終的には4技能に対応した入学者選抜の導入が期待される。 ○ 学習指導要領を踏まえた中・高等学校における英語教育と、大学及び高等学校入学者選抜との整合性を確保しつつ、コミュニケーション能力の育成に必要な4技能をバランスよく伸ばすことができるよう、各大学・高等学校の教育理念・内容等に応じた入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を踏まえつつ、既に広く認められている資格・検定試験を活用することは意義のあることと考える。 ○ 資格・検定試験を活用する際は、その有効性と課題を明確にした上で、生徒・学生が自ら主体的に学び、英語によるコミュニケーション能力の向上を図る一つの客観的な指標として4技能をバランスよく測ることができる効果的な試験を活用することとする。 (資格・検定試験の有効性) (資格・検定試験の課題) ○ 今後、英語力の評価及び入学者選抜において、コミュニケーション能力に必要な4技能を総合的に測る資格・検定試験の活用が、次のような具体的な方策を通じて英語教育の改善の促進につながることを期待する。 (2)改善の方向 資格・検定試験の活用促進○ 資格・検定試験の活用においては、学習指導要領に沿って中・高等学校卒業までに学習した4技能が総合的に育成されているかという観点から適正に評価することが必要である。 ○ そのような観点から、生徒等の英語力を客観的に把握するため、 国による資格・検定試験団体と連携した生徒の英語力調査を進めるとともに、 4技能を測定する資格・検定試験のうち、CEFRとの関連を考慮しつつ、 を、在学中の英語力の評価や入学者選抜において積極的に活用することを促進する。 ○ 資格・検定試験団体と国が連携した生徒の英語力調査を通じて、日常的な学習による生徒の英語力の測定及び学習状況に係る現状・課題を把握・分析し、それらの結果を学校において活用することにより、生徒の学習意欲を喚起するとともに、教員の指導改善に生かすことにつなげる。 ○ 各大学等の入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)との整合性を図ることを前提に、各大学の入学者選抜における資格・検定試験の活用を奨励する。このため、大学入学者選抜における具体的な活用方策として、後述の協議会において大学入試センター試験や各大学の個別学力検査の成績と資格・検定試験の結果の換算方法(※21)等を検討する。 (※21 資格・検定試験の活用事例としては、出願要件、いわゆる「みなし満点」、点数加算、判定優遇などがある。) ○ 例えば、4技能を測る資格・検定試験と大学入試センター試験の得点換算表を作成し、受験者は資格・検定試験と大学入試センター試験のいずれか点数の高い結果を各大学に提出できる仕組みや、各大学の個別学力検査を代替することなどが考えられる。また、義務教育段階の中学校までの高等学校卒業時における入学者選抜における資格・検定試験の活用の在り方と大学の入学者選抜の違いを含め具体的な活用方法を検討する。 ○ あわせて、協議会においては、4技能の総合的な育成及び適正な評価の観点から、入学者選抜における資格・検定試験の活用に関する有効性や留意すべき点について具体的な指針を提示し、生徒・学生の英語力も踏まえた多様な資格・検定試験の活用を奨励する。 (例) ○ 資格・検定試験の活用促進及び客観的な質保証を図る観点から、資格・検定試験が大学・高等学校等において適切かつ効果的に活用されるための環境整備として、大学、高等学校、中学校関係者、テスト理論等の専門家及び資格・検定試験の関係団体が参画する協議会を設置し、前述のような指針の検討、国際水準となっているCEFRとの関係を考慮した4技能を測定する試験としての妥当性に関する検証や、それらの結果の情報発信等を行う。 ○ また、「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)/(発展レベル)(仮称)」について具体的な検討を行う際には、前述のような取組を参考に資格・検定試験の活用の在り方について検討することが望まれる。また、達成度テストの時期については、人間性も含めた高等学校校までの育成すべき能力や実施時期も踏まえた検討が必要である。 ○ さらに、資格・検定試験を効果的に活用する次のような奨励策を推進し、具体的な参考事例を普及する。 入学者選抜又は在学中から卒業時までの英語力の評価において、資格・検定試験を効果的に活用する参考事例を公表する。 スーパーグローバルハイスクール等の国際的に活躍する人材を育成する高等学校において、生徒の英語力の測定に資格・検定試験の活用を奨励する。 スーパーグローバル大学等の取組において、大学入試改革の観点から資格・検定試験の学部入学者選抜における積極的な活用を促すとともに、学生のコミュニケーション能力の測定・把握、向上のための取組を奨励する。 大学及び高等学校入学者選抜における学力検査等の在り方の改善○ 学習指導要領に沿った英語の4技能を総合的に評価する学力検査等を奨励するため、前述の協議会において現状の学力検査等における英語問題の在り方の調査・分析等を行い、得られた結果が大学、高等学校等において活用されるよう広く情報発信等を行う。 ○ 日本人の英語力の現状と、日本人学生の海外留学を促進するという点から考えると、大学入試センター試験及び個別大学入試における英語の試験を廃止し、4技能をより正確に測る英語の資格・検定試験に代替すべきであるとの指摘があった。 ○ また、協議会において、4技能試験の活用促進に関する指針や、大学入試センター 試験及び個別大学の入学者選抜における英語の試験を4技能型に対応した在り方の検討などを協議会がいつまでにどのような取組を行うのかについて明確にすべきであるとの指摘があった。 改革4.教科書・教材の充実 (1)現状と課題(小学校) (※22 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」によれば、「外国語活動の授業が好きか」という質問に肯定的な回答を示している5年生の割合は77.0%、6年生の割合は66.5%、両学年平均71.7%。さらに、25年度学力調査・意識調査において同質問に対する肯定的な回答の割合は76%。前調査によると、「英語が使えるようになりたいか」という質問に肯定的な回答をした児童の割合は、91.5%) ○ 中学1年生対象による調査(※23)では、外国語活動の授業で、「もっと学習しておきたかったこと」の回答の割合として、「英語の単語を読むこと」が77.9%、「英語の単語を書くこと」が81.7%、「英文を読むこと」が77.6%、「英文を書くこと」が78.6%であり、音声中心の活動に比べ10ポイントほど高い数値である。小学校の外国語活動で音声中心に学んだことが、中学校での段階で音声から文字への学習に円滑に接続されていないこと、発音と綴(つづ)りの関係の学習や文構造の学習に課題があるなどの指摘があった。 (※23 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」) ○ このような状況を踏まえ、小学校の外国語活動が導入されて一定の成果を上げているものの、中学校での学習への円滑な接続を考えると、小学校高学年段階において、文字の扱いや文構造への気付きなど、中学校との接続を意識した指導に有効な教科書・教材が必要である。 (中学校・高等学校) ○ 現在の中・高等学校の教科書の中には、その構成上、結果的に文法事項の定着を図る様々な活動に分量の多くがとられており、題材や言語材料を活用しながら、説明・発表・討論することを通じて、思考力・判断力・表現力などを育成するような言語活動の展開が十分に意識されていないと思われるものも見られる。例えば、高等学校の「英語表現」では、文法事項や語彙、表現方法について学んだことを、生徒自らが、実際のコミュニケーションの場面を考えながら書いたり、発表したりするなどの授業展開ができるような構成となるよう改善が期待されるものも見られる。 ○ 文法事項についても、言語活動との関係で十分な文脈が与えられていないため、実際のコミュニケーションの場面で、その文法事項を使うことができるようになるための構成になっていない場合が多いとの指摘もあった。 ○ このような状況を踏まえ、学習指導要領に基づき総合的なコミュニケーション能力を育成する言語活動の展開を重視した教科書が多数発行されるよう、各発行者に対して十分周知するとともに、(2)で示すような改善が求められる。 (小・中・高等学校の共通事項) ○ 学校におけるICT教育に必要な環境整備と活用は、一部の学校・地域では進んでいるが、全国的に見ると英語教育におけるICTの環境整備と活用は十分と言えないとの指摘があった。英語教育の充実・強化に当たり、これらの充実を各自治体や学校、教員に促す必要がある。 (2)教科書・教材に関する改善の方向(小学校) ○ 補助教材については、アルファベット文字の認識、日本語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴、文構造への気付きを促す指導ができるようなものとし、高学年における英語の教科化において求められる教材等として、国の「英語教育強化地域拠点事業」における研究開発校等において、平成27年度より試行的に活用しながら、その効果を検証する。さらに、その検証結果を、小学校高学年の英語の教科化に向け、新学習指導要領移行期に各学校において活用することを想定した新たな教材開発に生かすものとする。 (中学校・高等学校) ○ 今後の教科書・教材については、授業において効果的にコミュニケーション能力を育成するため、文脈に位置付けられた文法事項などの言語材料と、言語の使用場面や働きを意識した言語活動とが総合的、かつ、効果的に関連付けられた授業をより一層展開しやすいように構成等を工夫することが必要である。 ○ あわせて、言語材料については、小・中・高等学校を通じて、学校段階間の学習内容を十分留意して、比較的易しいものから段階的に繰り返し触れることによって定着が図られるものが望ましい。 ○ さらに、できる限り多くの英語に触れる機会を増やして英語を英語のまま理解することができるようにするとともに、思考力・判断力・表現力などを養うという観点が重要である。 ○ 教科書・教材の作成・活用に当たり、次期学習指導要領の改訂において、そのような趣旨をより徹底するとともに、教科用図書検定基準の見直しに取り組むべきである。 (小・中・高等学校に共通する事項) (※24 「学びのイノベーション事業」実証研究報告書(平成26年4月11日:学びのイノベーション推進協議会)では、「「個別学習」では、デジタル教材などの活用により、自らの疑問について深く調べることや、自分に合った進度で学習することが容易となる。また、一人一人の学習履歴を把握することにより、個々の理解や関心の程度に応じた学びを構築することが可能。」、「「協働学習」では、タブレットPC 、電子黒板等を活用し、教室内の授業や他地域・海外の学校との交流学習において子供同士による意見交換、発表などお互いを高め合う学びを通じて、思考力、判断力、表現力などを育成することが可能となる。」とまとめている。) ○ 教育の情報化の推進については、学校における情報機器等の安定的かつ計画的な整備を促進するため、第2期教育振興基本計画(平成25年6月14日閣議決定)で目標とされている水準の達成に必要な所要額(平成26年度から4か年にわたり総額6,712億円)を計上した「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26年度~平成29年度)」に基づき、地方財政措置を講じることとしている。これを十分に周知し、英語教育を含むICT活用に必要な環境整備、学習用ソフトウエア、ICT支援員の活用について、地方公共団体における予算措置を促進する。 ○ 今後、国において「デジタル教科書・教材」の導入に向けた検討(※25)を行う。その際、デジタル教科書・教材が導入される際は、検定の対象となる教科書には音声や映像データが含まれるという考え方を明確にする必要がある。 (参考) 「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画」による学校のICT環境の整備 (※25 政府の世界最先端IT国家創造宣言(平成25年6月14日IT総合戦略本部、平成26年6月24日全部改定)工程表において、「「デジタル教科書・教材」の導入に向けた検討」、「「デジタル教科書・教材」の導入・普及促進に向けた環境整備」を行うこととされている。) 改革5.学校における指導体制の充実 (1)現状と成果(小学校) 指導計画の作成と授業の実施については、学級担任の教員又は外国語活動を担当する教員が行うこととし、 授業の実施に当たっては、英語母語話者や英語が堪能な地域人材の活用に努めるとともに、地域の実態に応じて外国語に堪能な地域の人々の協力を得る など、指導体制を充実することとされている。 ○ 平成23年度に小学校高学年に外国語活動が導入されて以降、多くの学校で学級担任とALTなど英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングによる指導体制の整備・充実が図られてきた。 ○ ALT等の外部専門人材は、現在1万2,000人(うちJET(※26)が4,000人であり、また、自治体の直接任用、労働者派遣契約によるもの及び請負契約によるものなどを合計すると約8,000人)となり増加傾向にある。 (※26 JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)では、平成26年度までに6万人を超える外国青年が、外国語指導助手(ALT)、国際交流員(CIR)やスポーツ国際交流員(SEA)として職務に従事。我が国の「内なる国際化」の進展に寄与。) ○ 教員とALTの連携による取組としてふるさと教材の開発や、外国語以外の教科でもALTを活用する取組も見られる。 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】 (2) 課題 ○ 小学校では、授業準備等の時間確保、教員の指導力、学級担任とALT等の外部人材との打合せの時間確保、小・中の連携の具体的な工夫などが課題として指摘されている(※27)。 (※27 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」) ○ ALTについては、地域や学校、教員によりその取組に差があり、補助的立場にあるALTに指導を任せてしまうという例がある。ALTの労務管理上、一部に学級担任等とALTとがティーム・ティーチングできない状況もある。 【ALTに関して指摘される課題】 ○ 小学校高学年の英語教育が教科化される場合、より専門性の高い教科指導を行う指導者の養成・採用が必要である。一方で、現状は、小学校で専科指導を行っている学校の割合は低く(※28)、小学校教員で中学校外国語科の免許状を有する者は約4%という状況で、必ずしも外国語教育に関わっていない。 (※28 文部科学省「教育課程の編成・実施状況調査(H25)」より、5年生は5.8%、6年生は6.2%) ○ これまでの小学校の学級担任を中心とした外国語活動における成果を十分に認識しながら、小学校における指導体制の在り方を検討するとともに、次期学習指導要領の改訂と並行して準備段階における専科指導者の養成・確保への支援が急務である。 (中学校・高等学校) ○ 学習指導要領において、指導計画の作成に当たっては、ネイティブ・スピーカーや外国人などの協力を得ることとされている。一部の地域では、実際の言語活動においてALTを積極的に活用しコミュニケーション能力向上を図るなどの取組がなされているが、中・高等学校の授業におけるALTの活用時間の割合は低い状況にある。 (小・中・高等学校に共通する課題) (※29 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」より、小学校では、学校の状況が「十分でない」又は「どちらかといえば十分でない」項目として、「準備等の時間確保」、「教員の指導力」、「小・中の連携」等を挙げる教員が多い(それぞれ80%、58%、74%)。文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」より、中学校の英語担当教員に対する集中的な研修の実施状況は、都道府県主催47.8%、市町村主催8.4%) ○ これまでの各学校での取組は、各英語担当教員個人の指導に任され学校全体でチームを組んで取り組むことが少なく、生徒指導、部活動などの対応もあることから、学校内外で教材研究や研修を行う時間の確保や、それら成果の共有ができない状況にあるとの指摘があった。また、国や地方公共団体の指定校の研究成果や、大学等との連携による質の高い養成・研修等に関する情報が蓄積されておらず、それらの効果的な活用がなされていないとの指摘もあった。 ○ このような状況を踏まえ、子供たちが外国語を通じて積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成するため、学校内における教員や外部専門人材がそれぞれ専門性を連携して発揮し、学校組織全体で一つのチームとして力を発揮することが重要である。また、大学や外部専門機関との連携により、英語担当教員の養成・研修を改善・充実することが必要である。 ○ 英語担当教員及び英語が多能なALT等の外部専門人材の配置や、地域における指導体制について、地域間、学校間における差があるため、必要な支援体制として、地域の英語教育を推進する指導者の確保、教育委員会と学校間の連携による効果的な養成・研修の実施、英語の外部専門人材の活用など、地域における戦略的な指導体制の強化が必要である。 (3)指導体制に関する改善の方向 小・中・高等学校に共通する指導体制(地域・学校における指導体制) ○ 地方自治体においては、各学校における英語教育充実のため、学校や地域全体で取り組むことが必要である。例えば、市町村単位で、地域の指導的立場にある教員が複数の小・中学校を受け持ち、英語教育担当指導主事や外部専門家等とチームを組んで指導に当たるなど、地域の実情に応じた柔軟かつ効果的な指導を行う体制づくりが期待される。 ○ また、優れた指導力を有する教員を、地域の研修講師や小・中学校の接続を前提とした専科指導等が可能となる「英語教育推進リーダー」として養成する。 ○ このような体制の中で、小・中・高等学校の一貫した英語教育や、小学校の英語教育の専門性の向上等を推進することが期待される。 ○ 国や地方公共団体の指定校の研究成果や優れた先進的な取組、各地方公共団体において目標設定・評価を行う取組、大学等との連携による養成・研修等の全体の成果・効果、課題を調査・分析し、域内の研修や各学校への指導・助言に生かすことが必要である。 ※平成26年度より、各都道府県教育委員会において掲げられている目標設定(例) (小学校) ○ 小学校中学年へ外国語活動を導入する場合は、地域の実情を踏まえ、学級担任とALTや専科指導を行う教員、学級担任と英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングを行うなど柔軟な指導体制が整備されることが必要である。 ○ また、小学校高学年における英語の教科化においては、英語の指導力を備えた学級担任や、専科指導を行う教員を含めた、より専門性を重視した指導体制について検討する必要がある。 (※30 小学校英語を教科として導入し英語力を向上した韓国では、小学校で学級担任が専科指導を行う教員と、専科指導のみを行う教員を配置する指導体制となっている、導入時に全員120時間以上の研修を受講することが求められるなど教員の英語力・指導力向上が進められてきた。) ○ 次期学習指導要領の改訂においては、このようなケースを想定した指導体制も視野に指導者の養成・研修・採用による充実が必要である。 ○ これらの指摘を踏まえ、小学校高学年における英語指導に求められる指導体制を強化するため、求められる教員と外部人材の資質・能力・資格要件などについて、次のような観点から具体的な指導体制の改善を進めることが必要である。 児童への指導に当たっては、英語教育に関する専門性を前提としながらも、児童理解の観点、他教科等と連動した学習内容・活動を行う観点から、学級経営を基盤とした授業の実施等に対応できる指導者が求められる。 今後も小学校では、児童の実態をよく知る学級担任が重要な役割を果たすこととなるが、高学年の教科を指導する場合、将来的に学級担任が英語の指導力に関する専門性を高めて指導する、併せて専科指導を行う教員を活用することにより、専門性を一層重視した指導体制を構築する。 外国語活動において役割を果たしてきた学級担任の中で、更に小学校高学年の専科指導にも当たることができるようにするため、「免許法認定講習」の開設支援等を行う。例えば、小学校の現職教員が、中学校の免許状を取得し、初歩的な文字指導から小・中連携に留意した指導計画の作成を行うことなどが可能となる専科指導が可能となる環境を整備する。 小学校高学年における英語の教科化に当たっては、専門性を有する適切な人材に特別免許状を積極的に授与し活用することや、英語が堪能な地域人材、英語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用するための方策も講じる。 加えて、外国語講師や、補助的な役割を果たす外国語指導助手(ALT)、英語が堪能な地域人材等の活用など、地域の実情に応じた指導体制を充実させることが重要である。 小学校における外国語活動では、外国語を使った活動を通じて、人とコミュニケーションを図る大切さや楽しさを体験し、国際理解を図り、視野を広げることを目的として、ALT等の外部人材の活用などによる指導体制の充実を図る。 小学校における学級担任と外部人材の連携については、それぞれの役割を明確にしつつ、適切かつ適正なティーム・ティーチング等が行われるための体制整備の充実を図る。 (例) ○ 小学校段階では、積極的に外国語を聞いたり話したりすることを重視する必要があり、専門性の高い教員との連携、外部人材やICTの活用を通じて指導の充実を図っていくことが重要である。 (中学校・高等学校) 指導に当たっては、英語教育に関する高い専門性を前提としながらも、他教科等と連動した学習内容・活動の実施等に対応できる指導者が求められる。 授業は生徒の理解の程度に応じた英語で行うことを基本としつつ、習熟度別指導や少人数指導などの工夫を可能とする指導体制を確保する。 授業を英語で行うことを基本とすることを前提に、会話からディベートやディスカッションなどで、実際に英語を活用するという観点から、外国語講師やALT、地域人材の活用などによる指導体制の充実が必要である。 外部人材の活用に当たっては、専門性を有する適切な人材に対しては特別免許状を 積極的に授与するための方策を講じる。 (例) ○ 中・高等学校段階では、言語活動の高度化に対応するため、外部人材やICTの活用を通じて指導の充実を図っていくことが重要である。 (外部専門人材の確保) (※31 平成26年6月19日「特別免許状の授与に係る教育職員検定等に関する指針」の策定について(文部科学省通知)) ○ 児童生徒が英語母語話者や英語が堪能な地域人材とのコミュニケーションを通じて、 標準的な英語音声に接し、正確な発音を習得する、 間違いを恐れずに、英語で情報や自分の考えを述べるとともに、相手の発話を聞いて理解するための機会が日常的に確保されること が重要である。そのため、外国語講師、ALT、地域人材等の活用など、指導体制を充実させることが大切である。少なくとも、次期学習指導要領の実施が想定される2020(平成32)年度の前年度までに、その質を確保しつつ、すべての小学校にALTが参画できるよう確保するとともに、その活用の在り方について学校や地域全体で十分に検討する必要がある。 ○ JETプログラムについては、地方公共団体における採用数がピーク時よりも減少している中で、集中的に配置支援を行いながら、その採用を促すことが必要である。 【JETプログラムの周知】
○ 外国語講師、ALT、英語が堪能な地域人材等の外部専門人材の活用において、教員とのティーム・ティーチングなどの質を確保しつつ、効果的かつ、適切な運用を図るためのガイドラインを整備することも重要と考えられる。今後、モデルとなるガイドラインを策定し、地方公共団体、各学校において地域の実情を踏まえた活用を促す。 [策定に当たり留意する点]※ガイドラインは別途作成 教員の養成・採用 ア.現状・成果 ○ 小学校に外国語活動が導入されて以降、その特性から、小学校の免許状に関し、英語教育指導法は必須となっていない。 ○ 中学・高等学校の免許状に関し、大学の教職課程では「教科に関する科目」として、英語学、英米文学、英語コミュニケーション、異文化理解が柱となっているが、生徒のコミュニケーション能力育成に必要な指導力を向上するための改善をすべきとの指摘がある。 ○ 公立学校における教員採用に関し、英語(英会話)の実技試験は、中学校で66県市、高等学校で55県市が実施している。資格・検定試験の結果により、採用試験の一部が免除される県市は17県市となっている。 イ.課題 ○ 小学校高学年の英語を教科化するに当たり、より専門性の高い教科指導を行う指導者の養成が必要である。 ○ 中学校では、高等学校における言語活動の高度化及び高等学校に円滑に接続することを前提として、基礎的な言語活動に対応できる指導力や英語力をもった教員の養成・採用が課題となっている。 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)】 ○ 英語担当教員の養成を通じて、英語力に関し、4技能を通じて高いコミュニケーション能力と指導力が修得されるよう、教職課程の質を一層向上させる必要がある。 ○ 小・中・高等学校を通じた英語教育改革の実施に当たっては、指導者としての教員の資質能力を向上させる観点から、教職課程を見直す必要がある。 ○ あわせて、教員採用においても英語力・指導力の高い者を採用する必要がある。 ウ.改善の方向 (小学校) ○ さらに、小学校高学年の英語を教科化するに当たり、小学校段階で系統的な指導を行うため、児童の発達段階に応じた、英語を「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の4つの技能にわたる総合的なコミュニケーション能力を身に付けるための英語の指導力を高める内容が求められる。そこで、教職課程において英語指導法に関する科目を履修させることについて検討が必要である。その際、学習指導要領の内容を踏まえた指導計画の作成、模擬授業、教材研究、効果的な評価方法などの内容を含むことが必要である。 ○ 具体的には、例えば、小学校における英語指導に必要な、基本的な英語音声学、第二言語習得、実際の場面で使うことができる語彙、表現、文構造、文法の特徴に関する理解と運用、異文化理解、発達段階に応じた適切な指導法、小学校における教室英語など教職課程において実践的な内容を扱う必要がある。 ○ あわせて、実践的な指導力を身に付けるため、ALT等とのティーム・ティーチングを含む模擬授業、小・中連携に対応した演習や事例研究などが取り扱われることが必要である。 [小学校「各教科の指導法における英語」に関する科目のイメージ(例)] (中学校・高等学校) ○ 中・高等学校の教職課程においては、学習指導要領の内容を十分に踏まえた構成とすることが必要である。このことを踏まえ、大学の教職課程の柱となっている「教科に関する科目」である英語学、英米文学、英語コミュニケーション、異文化理解について、4技能を総合的に育成するために必要な内容を明確にし、教職課程における改善・見直しを行う必要がある。 英語音声学、第二言語習得理論を含めた英語学 4技能を総合的に指導する英語コミュニケーションの科目が充実されることが期待される。 また、教職課程における改善・見直しに当たり、言語学、語用論・コミュニケーション理論などの充実についても検討が期待される。 [教科「英語」に関する科目イメージ(例)] ○ また、「教職に関する科目」においては、生徒の英語による言語活動が中心となる授業を展開する力が求められることから、4技能を総合的に育成するための指導法や、パフォーマンス評価等の評価方法などを含め、発表・討論・交渉などの言語活動の充実に対応した指導計画の作成、CBI(※32)など実践的な指導法、効果的な指導による授業実践の映像を活用した演習、模擬授業や教材の効果的な活用に関する研究などを求めることとする。あわせて、学校での優れた授業実践の視察・研究や、マイクロ・ティーチング等の授業実践など、より実践的な内容にする必要がある。 [教職に関する科目(各教科の指導法)(例)] (※32 CBIとは、コンテントベースドランゲージインストラクション(Content-based Instruction) という教授法。) ○ 英語担当教員となる者は、英語力・指導力を高めるとともに、異文化理解・異文化コミュニケーションへの認識を深めることが重要である。このため、英語担当教員養成を行う大学においては、例えば卒業までに短期間の海外体験(語学留学、交換留学、海外インターンシップなど)の機会が得られるよう配慮することが期待される。今後、文部科学省で進めている「トビタテ!留学JAPAN」などを含め、在学中の海外留学を積極的に活用することを奨励する。 ○ こうした取組を通じて、養成段階における教員志望者の英語力を高め、英検準1級、TOEFL iBT80点程度以上などとすることが期待される。 (小・中・高等学校で共通する事項) ○ 次期学習指導要領の改訂に向けて、小学校における外国語の教科化、及び中・高等学校における言語活動の高度化などに対応した「教職に関する科目」、「教科に関する科目」の在り方について調査・研究を行い、各大学等におけるカリキュラムの見直しに当たり、活用することを奨励する。さらに、これらについては、今後の中央教育審議会における教員養成の見直しの審議全体の中で検討を行う。 (採用) ○ また、養成段階における取組にあわせ、英語力の高い教員を採用するため、採用段階においても、英検準一級、TOEFL iBTスコア80程度以上の者を採用するような取組が期待される。 ○ 今後の小学校では、英語教育の方向性を踏まえ、当面、前述のように学級担任が専科指導を行ったり、高学年の専科指導を行う教員が学級担任と連携しながら授業を実施したりする指導体制が想定されるが、専科指導を想定した小学校教員の採用選考に当たっては、採用段階における英語力の基準を設定することや、海外留学の経験、面接試験、模擬授業などによる実技試験等によってコミュニケーション能力などの専門性を考慮した採用(※33)の実施を奨励する。 (※33 英語の資格による試験免除の実施状況17市県、採用時の外国語活動の実技試験実施状況20市県) 教員研修ア.現状と成果 ○ 将来の小学校における外国語教育の充実や、中・高等学校における英語教育の高度化に向けて、平成26年度から、国において、外部専門機関と連携して研修を実施している。また、自治体における研修への補助も開始した。 ○ この研修参加者について、多くの教員の英語力が向上し、「これからの授業を英語で実施したい」と考える教員が大幅に増加している。 【英語教育推進リーダー中央研修に参加した小学校教員へのアンケート(H26)】 イ.課題 ○ 優れた教員ほど多忙であり、研修への参加や他の教員への指導に集中できないとの声が多い。また、小・中・高等学校の教員の多くは指導力を向上させたいと感じているが、地域における研修機会は十分とは言えず、教育委員会と大学・外部専門機関との連携が十分と言えない(※34)など、更なる充実を図る余地があると考えられる。 【「英語教育実施状況調査(H25)」】 (※34 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」) ○ 教員の英語の指導力向上のためには、教職課程の見直しを進めるとともに、現職教員についても、適切に英語力・指導力を向上し、英語によるコミュニケーション活動を行うことができるよう、絶えず学び続けることが大切であり、現職教員の研修を大胆に進めることが重要である。 ウ.改善の方向 ○ 教員の英語力・指導力の向上のためには、小・中・高等学校を通じた新たな英語教育に向けて、その養成段階から見直すことが重要であるが、併せて現職教員の研修も充実すべきである。そのため次期の学習指導要領改訂に向けて、教員の意識改革を進めるとともに、新たな英語教育に対応した研修を確実に実施することが必要である。その際、ICTも活用しながら、効果的な研修を工夫することが不可欠である。 ○ 現職研修の充実に当たっては、教育委員会と大学・外部専門機関等との連携を図る体制を構築し、継続的な現職研修や養成カリキュラムの開発・実施につなげていくことが必要である。 ○ 平成26年度から開始した国による「英語教育推進リーダー」研修を受講した教員を中心に、次期学習指導要領の改訂に向けた域内研修の体制を充実し、研修成果を確実に波及させることで、域内教員の英語力・指導力を向上させる。 【教員を対象とする研修等の例】 ○ 外部専門機関との連携による域内研修は自治体と連携して夏休み等に集中して行う研修に位置付け、実践的な指導を行うため協力校における公開授業や研究会の実施などを含めた域内の研修システムづくりが重要である。 ○ 国・地方公共団体による地域の教員研修のシステムづくりに当たっては、地域の中心となる「英語教育推進リーダー」の養成とともに、そうした者が地域の研修の企画・運営に参加することが可能となるよう、後補充の定数措置や非常勤講師等外部専門人材の活用を充実する。その際、研修の質の改善のため更なる取組を支援する。 【研修の質の向上のため、今後更なる取組が必要となる事項】 ○ 研修に参加する教員の研修効果が高まるよう、その目的・趣旨等の周知徹底を図る。併せて教員の負担軽減を図るため、研修期間を夏休み等に集中して行うことや、単位制にするなど、教員が研修に参加しやすい環境整備が必要である。 ○ 授業において、ICTを効果的に活用するためには、教員の指導力の向上が必要である。ICTを用いた指導方法についての研修の充実を図るため、授業の展開を明確にイメージできるような映像等を用いた指導事例の作成や研修教材・研修マニュアルを作成し、普及を図る。 ○ また、教育委員会と大学が連携した研修内容を「免許法認定講習」や「免許状更新講習」(※35)へ位置付けていくことを奨励する。 (※35 「教員免許更新制度の改善について(報告)」(平成26年3月18日:教員免許更新制度の改善に係る検討会議)。) (责任编辑:) |