著書を手に持つ前田麦穂・国学院大助教
[PR] 全国的に公立学校教員のなり手が減るなか、都道府県や政令指定市の教育委員会が教員採用試験の日程の前倒しに取り組んでいる。文部科学省が6月16日を「標準日」として早期化を求めたことが背景にある。これで志望者は増えるのか。国や自治体は今後どうすべきか。教員採用の在り方について研究し、「戦後日本の教員採用」(晃洋書房)の著書がある前田麦穂・国学院大助教(教育社会学)に聞いた。 ――文科省は2023年5月、「質の高い教師を確保する」ためとして、6月16日を試験実施の標準日として、各地の教育委員会に試験日程の前倒しを検討するよう求めました。 民間企業の内定時期などとの兼ね合いから、教員採用試験の早期化を求める声は、教員の確保が課題となっていた1970年代など、以前からありました。実際、採用時期は徐々に早まってきた経緯があります。 戦後まもなくは採用直前の2~3月だったのが年内になり、秋を経て1980年代後半にはほぼ全国的に7月に。以来、長く動きがありませんでしたが、近年、採用倍率の低迷が続いたことで何らかの対策が必要になり、取り組まざるを得なくなったのでしょう。 前倒しても全体の日程は変わらない?――「7月」が長く続いたのはなぜでしょうか。 筆記が中心の1次試験のあと、2次試験では面接や模擬授業を行うのが一般的です。こうした試験は実施する側に人手が必要で、教員らが対応できる夏休みに行うケースが多い。1次を前倒しにしても2次を変えるのはなかなか難しい現実があります。今回の前倒しも1次試験が主で、2次試験の日程はあまり変わっていません。文科省は来年度実施の1次試験の標準日を5月11日とさらに1カ月前に設定しましたが、結局、試験全体が終わる時期は大きくは変わらないのではないでしょうか。 ――前倒しの効果はあるのでしょうか。 文科省は標準日を示しはしましたが、当然ながらこれに強制力はなく、各教委がそれぞれに検討した結果、全国的に試験日がばらつくことになりました。受験生にとっては複数の地域を併願しやすくなり、1人当たりの出願数が増える可能性があります。結果的に、見かけ上の志願者数が増えやすい状況になっています。 ただし、教員を志望する実人数を増やす効果があるかは疑問です。そもそも、教員を目指す大学生にとって日程がどれだけネックになっていたのか。普段から教員志望の学生と接していますが、日程が遅いから受けないという話はあまり聞いたことがありません。前倒しの前に、学生のニーズをどの程度調査したのか、疑問があります。 加えて、前倒しの弊害についても考えなければなりません。 前倒しに負の側面も 「文科省は検証を」――どのような弊害が考えら… (责任编辑:) |