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第13回知識構造化シンポジウムが、2021年9月17日(金)に日本科学技術連盟・東高円寺ビルにてライブ配信で開催された。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ライブ配信のみの開催となった。今年のシンポジウムでは、SSM活用の推進・定着の取り組み、業務経験から得た教訓を全社活用する仕組みづくり、過去トラブルの効果的なチェックによる品質強化など、SSM実践各社の様々な活動について講演や議論がなされた。
注)
SSM(Stress Strength Model)とは、トラブルに関する経験やノウハウを活用しトラブル未然防止ができるように、知識を構造的に整理・表現する手法である。
2. プログラム
時間
内容/講演者(敬称略)
13:30~13:40
オリエンテーション
13:40~14:15
事例講演1:『SSMの活用による水処理に関する設計品質向上の取組み』
植田 誠治(栗田工業(株) グループ生産本部 副本部長、CQO)
井村 大輔(栗田工業(株) グループ生産本部 製造部門 品質保証一部 品質保証課 課長)
14:15~14:50
事例講演2:『SSM活用による車載半導体の品質を強化する仕組みづくりと定着化』
泉 龍介((株)デンソー セミコンダクタ事業部
センサ&セミコンダクタDX推進室 DX戦略課 課長)
14:50~15:05
休憩
15:05~15:40
事例講演3:『SSMを活用した経験学習サイクルの実践』
小倉 昭男(ブラザー工業(株) 品質・製造センター 品質革新部 グループ・マネージャー)
安藤 美和(ブラザー工業(株) 品質・製造センター 品質革新部 チーム・マネージャー代行)
15:40~16:10
特別解説:『SSM導入・定着のポイントと構造化知識の多様な活用方法』
長谷川 充 ((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)
16:10~16:50
総合討論:全講演者
コーディネータ:田村 泰彦( (株)構造化知識研究所 代表取締役)
16:50~17:00
まとめ
3. 講演要旨
〔事例講演1〕SSMの活用による水処理に関する設計品質向上の取組み
植田 誠治氏(栗田工業(株) グループ生産本部 副本部長、CQO)
井村 大輔氏(栗田工業(株) グループ生産本部 製造部門 品質保証一部 品質保証課 課長)


同社は、産業向け水処理設備の設計・建設からサービスまで、顧客の課題を解決する総合ソリューションを提供している。本講演では、水に関するトラブル情報をSSM知識化し、類似トラブルを未然防止する仕組みの構築とその運用について紹介された。
同社では、過去のトラブル情報を記録・蓄積していたが、再発防止や未然防止の取り組みにおいて、十分に活用できていなかった。その結果、類似問題の再発や設計の手戻りが生じるなど、設計業務に悪循環が生じていた。それらの課題を解決し、再発防止・未然防止の取り組みを強化すべくSSMを導入した。
具体的には、SSM委員会を設置し、部署を横断したSSM活動の取り組みを進めた。まず、SSM知識づくりにおいて、設計部員が主体となって作成したSSM知識を、各分野のベテランが審査し、最後にSSM委員会関係者を含めて知識レビューを行う体制を整え、質の高い知識の蓄積を担保する仕組みを構築した。また、知識活用時は、プロジェクトで取り扱うユニットと、業務プロセス(計画、工事など)との組合せにより、知識を絞り込んで検索する仕組みを構築し、それぞれの業務プロセスで検討すべき内容を効率的に取得できるようにした。さらに、各業務プロセスで取得した知識を1つのファイルに集約し、前の業務プロセス担当者が対応した結果を確認できる仕組みを構築した。
SSMを適切な場面で活用するために、同社では、QMSの文書の中でSSMの活用を明示し、社内の仕組みを整備した。その結果、各種ゲート(設計レビュー)において、SSM運用率は100%を示し、SSM導入後、同社では顕著なロスコストの低減が確認された。
また、SSMの取組みを継続するために、検索により抽出されたSSM知識がプロジェクト案件で活用できる知識か、SSM知識の質が維持されているかなどについて、プロジェクト案件ごとにSSM知識の有効率を集計し、効果の確認を行っている。有効率を向上させるために、知識検索がしやすいキーワードリストの工夫や、SSM知識の内容の見直しを行い、その結果、現在も高い有効率を維持している。
その他にも、SSMの利用者からの要望に対する取り組みを進めた。例えば、「文章だけではSSM知識の内容が伝わりにくい」という要望に対して、SSM知識の該当する文言に対して画像を表示できるようにし、「SSM知識を出力する操作手順が分かりづらい」という要望に対しては、知識の検索からExcel出力までの基本的な操作ガイドを動画で作成した。このような利用者の要望に対するサポートを実施して、SSMの利用率向上につなげた。
今後もSSM活動を通して、設計者がSDCAサイクルを自立して回す仕組みを推進し、未然防止活動を強化していく。また、海外グループ会社への展開をはじめ、全社でのSSM知識を活用した未然防止活動の強化を推進していく。
〔事例講演2〕SSM活用による車載半導体の品質を強化する仕組みづくりと定着化
泉 龍介氏((株)デンソー セミコンダクタ事業部 センサ&セミコンダクタDX推進室 DX戦略課 課長)

同社は、先進的な自動車技術、システム・製品を提供するグローバルな自動車部品メーカーである。本講演では、同社の車載半導体の事業において、事業部内を横断したSSMによるナレッジの活用促進の取り組みについて紹介された。
同社では、製品開発時にFMEAを基軸としたデザインレビューを実施している。FMEAを実施する際には、過去トラブル情報のチェックを行っているが、製品企画~量産までの工程ごとにデータベースが存在しており、またフォーマットも異なるため、過去トラブル情報のチェックに時間がかかっていた。この課題を改善し、今後起こりうるリスクの検討や設計検討に費やす時間を増やしていきたいという狙いから、SSMを導入した。
SSMの導入後、SSM知識の蓄積、製品開発部門での試行活用を経て、製品開発部門、製造部門、品質保証部門が協力して知識活用促進の強化プロジェクトを始動した。
強化プロジェクトでは、知識活用促進に向けた仕組みとして、SSM知識にSSMの各要素を繋げた知識要約を作成し、この知識要約を読むことにより、自身の設計対象との関係有無を短時間に確認できるようにした。さらに、設計者のチェックが妥当であるかを上司や品質リーダーが確認することで抜け漏れのない過去トラブル情報のチェックを実現し、チェック結果はエビデンスデータとして蓄積するルールとした。また、今まで不具合発生後に事業部内へ横展開すべき内容であるかの判断を開発部門や製造部門が属人的に実施していたが、品質保証部門で横展開の判断を最終承認する仕組みに変更し、必要な知識を確実に蓄積する仕組みを構築した。合わせて、過去トラブル情報の登録時は、SSM構造で整理した不具合メカニズムを不具合発生原因の説明とすることで、当該情報の登録手続きを簡素化し、SSM登録による負荷増加を抑制した。
その他、SSM知識活用の定着に向けたサポート活動として、SSM知識づくりのための教育資料の整備や、セルフラーニングができるポータルサイトの設立など、事業部員への教育を実施した。
このような取り組みにより既存データベースと比較して、見るべき過去トラブル情報の検出精度(ヒット率・ノイズ率)が大幅に向上した。また、知識要約を記載した効果により、知識内容のチェック時間に対する時短効果が得られた。
今後の活動として、各部門でSSM知識作成を推進できる指導師の育成など、さらなるSSM知識作成のチェック体制の強化を進めていく。また、過去トラブル情報のチェック結果のエビデンスデータを分析し、更なる検索精度の向上を行う。その他、製造部門への展開も推進し、さらなる品質強化に繋がる活動に取り組んでいく。
〔事例講演3〕SSMを活用した経験学習サイクルの実践
小倉 昭男氏(ブラザー工業(株) 品質・製造センター 品質革新部 グループ・マネージャー)
安藤 美和氏(ブラザー工業(株) 品質・製造センター 品質革新部 チーム・マネージャー代行)


同社は、レーザープリンター/複合機や家庭用ししゅうミシン等の民生品事業から、工作機械や工業用ミシン等の産業用製品事業まで、幅広い事業を展開している。本講演では、同社製品の品質向上の取り組みにおけるSSMの位置付けや具体的な活動内容が紹介された。
同社では、“業務経験を通じた学び(経験学習)”を重視しており、品質保証部門では、様々な製品から得た教訓を活かすため、全社での問題情報の共有を推進している。その一方、活用に至らない問題情報が数多く存在する、あるいは、製品や機構の枠を超えた活用ができていないといった状況を抱えており、教訓を活かしきれていない問題があった。この問題を解決し、製品設計での教訓の蓄積・活用を通した経験学習の促進と企業の成長を目的に、SSMを導入することにした。
同社では、SSM活動による経験学習サイクル推進を品質向上の柱の一つと位置づけている。活動の展開にあたり、知識活用の主体である各開発部門にはキーマンを配置し、キーマンがその部門での知識整理・活用の中心的役割を担っている。一方、品質保証部門はSSM活動を推進するために事務局の役割を担い、各開発部門での知識整理・活用の推進を支援する体制を構築した。また、問題情報から得られる不具合の発生メカニズム・要因、不具合を是正する対策や設計での再発防止策をSSMの観点で記述するための事例シートを整備した。事例シートは設計担当者が作成し、キーマンが技術的な正しさや情報の抜け漏れを確認、承認する。さらに、事例シートは簡単に事務局に提出できる仕組みを構築しており、事務局では事例シートからのSSM知識化を一手に担っている。
作成したSSM知識は、DRBFM情報から作成したSSM知識と共に設計業務プロセスの上流設計において活用し、再発防止・未然防止に取り組んでいる。各事業で製品に合わせて最適化された業務プロセスが構築されているため、各製品の設計業務で使いやすい知識活用帳票を用意した。各帳票では、前機種の検討結果や文字情報以外の回路略図等の参照図を取り込めるようにしている。また、製品安全リスクアセスメントにおいてもSSM知識を活用できるようにし、各開発部門での知識活用を促す仕組みを構築した。
SSM活動の効果の確認として、活用した知識に対する有効度判定を複数の部門で行った結果、評価や設計の見直しにつながったSSM知識の内、51%が他部門の知識であることを確認でき、全社でSSM知識を共有する取り組みの効果を確認できた。さらに、SSMを適用したプロジェクトにおけるSSM知識として登録済みの類似不具合の再発をゼロに抑えることができた。
また同社では、お客様の使い方や期待を元に製品づくりの目標値として定めた品質基準をSSM知識と紐付けて登録し、設計業務におけるSSM知識活用の効果を高めている。
〔特別解説〕SSM導入・定着のポイントと構造化知識の多様な活用方法
長谷川 充氏((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)

SSMは、電機・電子部品、自動車・輸送用機器、精密機器、産業機械・プラント設備、住宅設備、素材等の様々な分野で導入が進められている。技術分野では機構・電気のほか、ソフトウエア、生産技術、品質保証、メンテナンスなど幅広い領域で取り組みが進められている。
SSM活動の導入・定着のポイントとして、適切なチームの人選を行うこと、業務部署や技術分野をある程度絞り、具体的な再発防止・未然防止の課題を克服する取り組みからトライアルを行うこと、トライアル結果が課題解決に繋がっているかを評価し、適宜改善すること、継続的な知識運用のための知識管理体制を構築すること、設計者や現場担当者のヒアリングから知識活用の仕組みを適宜改善することなどが挙げられる。
SSM 導入各社は、業務ニーズに応じて知識運用のための様々な工夫を施している。設計変更点からのリスク検討に限らず、環境条件やユーザの使用方法などの変化点から影響を受ける設計アイテムと不具合の気づき、発生した不具合事象と設計アイテムの組み合わせで不具合発生メカニズムを抽出する仕組みなど、各業務で必要な知識を効率よく取得するために様々な知識検索の仕掛けを施している。また、過去実施した類似機種のFMEA実施結果と他の不具合知識を利用してFMEAを支援するための工夫、トラブル原因分析時の教訓整理を円滑に行うための仕組みなども進められており、SSMはトラブル初期対応から原因分析、知識蓄積、そして未然防止・再発防止の徹底までを確実に繋げることができる。
今後SSM導入を検討される方々には、紹介された内容をぜひご活用して頂きたい。
4. 総合討論
(株)構造化知識研究所代表取締役の田村泰彦氏がコーディネータとなり、講演者とシンポジウム参加者との間で総合討論が行われた。講演各社の SSM活動の体制づくりや推進方法、知識の質を高める取り組み、人材育成など、多様なテーマで終了時間まで盛んな議論が行われた。
 
5. おわりに
今回のシンポジウムはライブ配信のみの開催となったが、ライブ配信の参加者から非常に多くの質問がチャットで寄せられ、SSM活動への関心の高さが伺えた。
今回の講演では、部門・拠点間で不具合知識をどのように共有し、未然防止に繋げるかについて,皇冠講演各社から具体的な取り組みが紹介された。SSMを導入検討されている方々や、未然防止または再発防止活動で苦労されている方々、SSM の継続的運用、全社展開を検討している方々にとって、本シンポジウムはとても参考になったであろう。
(文責:小林 計太)
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(株)構造化知識研究所(SSM、構造化知識の説明をご覧いただけます)
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